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独占禁止法違反行為に係る損害賠償請求訴訟に関する資料の提供等について

独占禁止法違反行為に係る損害賠償請求訴訟に関する資料の提供等について

平成3年5月15日
事務局長通達第6号

改正 平成17年12月19日 事務総長通達第14号
平成21年 8月25日 事務総長通達第14号
平成27年 3月31日 事務総長通達第7号

 独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟制度の有効な活用を図るため,また,独占禁止法違反行為(以下「違反行為」という。)を原因とする民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟等に資するため,裁判所又は訴訟当事者から求めがあった場合の資料提供等を,以下の要領で行うものとする。

第1 命令が確定した後の資料提供

 排除措置命令又は排除措置命令がされなかった場合における課徴金の納付命令(以下これらの排除措置命令又は課徴金の納付命令を「命令」という。)が確定した場合における資料提供等を,以下の要領で行うものとする。

1 損害賠償請求訴訟提起前における取扱い

 確定した命令が存在する違反行為の被害者又はその代理人である弁護士等(以下「被害者等」という。)から,当該被害について損害賠償請求訴訟を提訴するために必要であるとして資料提供等の求めがあった場合には,被害を受けたとする違反行為に係る排除措置命令書又は納付命令書の謄本又は抄本を提供する。
なお,当該違反行為が独占禁止法第8条(事業者団体の禁止行為)の規定に違反するものである場合において,被害者等からの求めがあったときには,当該事業者団体の構成事業者の名称及び住所に関する資料を提供する。

2 損害賠償請求訴訟提起後における取扱い

(1)文書送付嘱託があった場合の対応

 確定した命令が存在する違反行為に係る損害賠償請求訴訟が提起された場合において,受訴裁判所から民事訴訟法第226条の規定による文書送付嘱託があったときには,イの事項に配慮しつつ,以下のように取り扱う。

ア 提出する資料の例

 命令に至るまでの過程で取得,作成した資料のうち,違反行為の存在並びに違反行為と損害との間の関連性ないし因果関係及び損害額の立証に関連するものとして,例えば,以下のような資料を裁判所に対して提出する。

(ア)違反行為の存在に関連する資料の具体例

 命令において,事実認定の基礎とした資料

(イ)違反行為と損害との間の関連性ないし因果関係及び損害額に関連する資料の具体例

a 違反行為の対象商品又は役務の取引・流通慣行等に関する資料

b 違反行為の経緯,実施状況,実効確保手段等に関する資料

c その他違反行為と損害との間の関連性ないし因果関係及び損害額を立証するために有益と考えられる資料

イ 配慮される事項

(ア)事業者の秘密
 独占禁止法第39条は,その職務に関連して知得した「事業者の秘密」を他に漏らすことを禁止しているので,資料の提出に当たっては,「事業者の秘密」を漏らすこととならないよう配慮する。

a 「事業者の秘密」の取扱いの基準

 「事業者の秘密」とは,以下の三つの要件をすべて満たすものをいう。
 [1] 非公知の事実であって,
 [2] 関係事業者が秘密にすることを望み,
 [3] 客観的にみてもそれを秘密にすることにつき合理的理由があると認められるもの

 客観的にみてもそれを秘密にすることにつき合理的理由があるか否かは,当該資料を提出する必要性と当該資料を秘密にする必要性との比較衡量等により判断される。
 違反行為の具体的内容のうち,非公知の事実という要件を既に欠いているものや,公表されていないものであってもこれを秘匿する合理的理由に乏しいと考えられるもの(例えば,価格引上げ協定事件における会合の場所,会合参加者の役職,氏名等)については,「事業者の秘密」に該当しないものとして取り扱う。
 これに対して,例えば,個々の事業者の個別商品ごとの製造原価及び仕入価格(リベートを含む。),取引先名,営業上のノウハウ等,「事業者の秘密」に該当すると考えられるものについては,bの方法によって取り扱う。

b 取扱いの方法

[1] 資料の一部を抹消すれば「事業者の秘密」に該当しない場合には,当該部分を抹消した上で提出する。
 例えば,資料の一部に個別商品の製造原価に関する記載がある場合には,当該部分を抹消した上で提出する。
 また,例えば,違反行為者の取引先別の価格の推移に関する資料は,当該取引先にとっては個別商品の仕入価格を明らかにするものであるが,取引先名を抹消すれば個々の取引先の仕入価格は明らかにならないので,取引先名を抹消した上で提出する。

[2] 代替的な方法が可能な場合には,その方法によって提出する。
 例えば,違反行為者の取引先別の価格の推移に関する資料について,特定の取引先に対する価格の引上げ時期及び引上げ幅が立証事項となっており,取引先名を抹消したものでは証拠として使用できないと考えられる場合には,特定の取引先に対する価格の引上げ時期及び引上げ幅を記載した資料を作成し,提出する。

(イ)事件処理手続上の問題

 資料の取得源が明らかになれば当該資料の提供者が不利益を受けるおそれがあると認められる資料,その他将来の事件処理に具体的に支障が生ずることが明らかに認められる特段の事情がある資料については,当該資料の一部を抹消する等の配慮をした上で提出する。

(ウ)個人のプライバシー
 他に漏らすことにより個人である事業者本人又は事業者の役員若しくは従業員のプライバシーの侵害になるような事項を含む資料については,「事業者の秘密」の場合と同様の配慮をした上で提出する。

ウ 提出の時期等

(ア)提出の時期

 受訴裁判所から文書送付嘱託があった場合には,速やかにその対象となっている資料を提出する。
 当該裁判所から,提出の期限について要望がある場合には,できる限りこれを尊重する。

(イ)提出する物

a  提出する物は,原則として,原本とする。ただし,資料の一部を抹消して提出する場合,原本を保持する必要がある場合,その他原本を提出できない特段の事情がある場合には,写しを提出する。

b 提出する写しは,謄本証明又は抄本証明を行ったものか,写しの作成の経緯等を付記したものとする。

(2)調査嘱託,鑑定嘱託があった場合の対応

 受訴裁判所から,民事訴訟法第186条の規定による調査嘱託,同法第218条の規定による鑑定嘱託があった場合には,これに応ずる。ただし,上記(1)イ記載の事項に配慮する。

第2 命令が確定する前の資料提供

 命令に関する取消訴訟中の場合,その他命令が確定していない場合において,違反行為の被害者等から損害賠償請求訴訟を提起するために必要であるとして,資料提供等の求めがあったとき,又は,提訴後,原告(被害者)若しくはその訴訟代理人から資料提供等の求めがあったときには,排除措置命令書又は納付命令書の謄本又は抄本を提供する。

第3 事務の受付

 本件に関する事務の受付は,本局においては審査局管理企画課が,地方事務所(支所を除く。)及び支所においては総務課が行う。

附則

1 この通達は,平成18年1月4日から施行する。
2 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第35号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる場合における手続に係る事件に関する資料の提供等については,なお従前の例による。

附 則(平成27年事務総長通達第7号)

1 この通達は,平成27年4月1日から施行する。
2 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第100号)附則第2条の規定によりなお従前の例によることとされる場合における手続に係る事件に関する資料の提供等については,独占禁止法違反行為に係る損害賠償請求訴訟に関する資料の提供等についての一部を改正する通達(平成27年事務総長通達第7号)による改正後の独占禁止法違反行為に係る損害賠償請求訴訟に関する資料の提供等について(平成17年事務総長通達第14号)第3を除き,なお従前の例による。

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