1 メーカーによる販売店の製品カタログの代行作成

 機械製品のメーカーが,取引先販売店の製品カタログを代行して作成することについて,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例。

1 相談者

 A社(機械製品のメーカー)

2 相談の要旨

(1) A社は,機械製品の有力なメーカーである。取引先販売店には,A社製品について継続的な取引を続けているものが多い。

(2) A社は,販売店が広告として利用できるようにメーカー希望小売価格を記載したA社の製品カタログを取引先販売店に有料であっせんしている。しかし,最近はオープン価格の製品が増え,製品カタログにメーカー希望小売価格が表示されていない製品が増えている。このため,販売店は,製品カタログとは別に各販売店の小売価格を表示した独自の広告を作成する必要が生じている。

(3) A社は,経費的に独自の広告を作成することができない販売店のため,製品カタログの中に各販売店の小売価格を掲載するページを設け,各販売店が希望する小売価格と当該販売店の名称・住所を印刷するサービスを行いたいと考えている。このための経費として販売店からは実費を徴収するが,A社がまとめて印刷会社に発注することから,各販売店が独自に広告を作成するよりも安く印刷できる。
 なお,製品カタログに掲載される各販売店の小売価格は,各販売店がA社から配布された印刷申込書に記入し,各販売店から印刷会社に直接持ち込まれ,印刷された製品カタログは印刷会社から各販売店に配送される。

(4) A社は,各販売店が自己の小売価格を決める際の便宜に資するように,価格印刷検討表を各販売店に配布したいと考えている。この検討表には,商品番号,メーカー希望小売価格,リベートを除いた実質の仕入価格と,この仕入価格にそれぞれ一定の粗利を上乗せした小売価格(4種類の価格パターンと空欄(自由価格))があらかじめ記載されている。印刷を希望する各販売店は自己の小売価格を4種類の価格パターンから選択するか,別途自ら定めた小売価格を空欄に記載することとする。
 このような方法により,A社が各販売店の製品カタログを代行して作成することは,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

 A社が取引先である各販売店の小売価格を掲載した製品カタログを販売店に代わって作成することから,本件は,再販売価格の拘束の観点から検討する。

(1) メーカーがマーケティングの一環として,又は流通業者の要請を受けて,流通業者の販売価格を拘束する場合には,流通業者間の価格競争を減少・消滅させることになることから,このような行為は原則として不公正な取引方法として違法となる。[流通・取引慣行ガイドライン 第2部第1-1(再販売価格維持行為の考え方)]

(2) A社が各販売店に価格印刷検討表を配布することは,これを通じてA社の営業担当者が各販売店に対して同検討表の利用方法を説明したり,各販売店の求めに応じて他の販売店の小売価格の状況を説明することが十分予想される。そして,A社の価格設定への関与や価格の算定方法の指導が行われることにより,同検討表の価格パターンに販売店の自由記載欄(空欄)があるとしても,各販売店の小売価格を4種類の価格パターンの中から選択するように誘導する効果を有するものと考えられる。
 A社の取引先販売店には,A社製品について継続的な取引を続けているものが多いところ,このような販売店に対する価格設定への関与や指導を通じて,A社が各販売店の小売価格を拘束することになるおそれがあるといえる。
 したがって,A社が本件相談の価格印刷検討表を配布することにより,各販売店の製品カタログの作成を代行することは,販売店に対する再販売価格の拘束につながる行為として,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 A社が,価格印刷検討表を各販売店に配布することにより,各販売店の製品カタログの作成を代行することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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