19 工事のいわゆる上請行為の自粛 [団体ガイドライン6-1]

1 相談者

 道路舗装工事業者の団体(平成9年度)

2 相談の要旨

(1) 建設業法においては,建設業者は,発注者の信頼を裏切ることなく適正に施工するため,自己の請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせてはならず,また,他の建設業者の工事を一括して請け負ってはならない旨が定められている。ただし,あらかじめ発注者の承諾を得た場合には,例外的に一括下請負が認められる。また,元請負人が下請工事に実質的に関与している場合には,一括下請負には該当しないと解されている。

(2) 道路舗装工事の事業免許を持つ事業者は,全国で約70,000社あるが,これに対応するだけの工事量が存在するわけではない。これら事業者の中には工事能力のない者がおり,地方自治体が地元の中小企業に優先的に発注する政策を採っているため,受注した地元業者が全国的に活動する大規模事業者に丸投げを行うことが横行している。業界では,中小企業が元請けとなった公共工事を大規模事業者に下請負させることを上請けと称している。
 当団体の会員は工事能力のある事業者であるが,地元業者に対して入札で不利となり,上請けでしか工事に携わることができない場合が生じており,このような状況は問題があると考えている。

(3) そこで,当団体として,会員は工事の上請けを行わない旨申し合わせることを検討しているが,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 事業者団体が事業者に,正当な理由がないのに,競争関係にある他の事業者と共同して,ある事業者に対し取引を拒絶する行為をさせるようにすることは,共同の取引拒絶(一般指定第1項)に該当する行為をさせるものとして不公正な取引方法に該当し,独占禁止法第8条第1項第5号の規定に違反する。[団体ガイドライン6-1(共同の取引拒絶)]

(2) いわゆる上請行為については,元請人が計画,管理,監督等において実質的に関与している場合には一括下請負に該当しないとされており,すべての上請行為が違法なものとは限らない。
 したがって,団体としていわゆる上請けを行わないことを申し合わせ,会員が,中小企業が請け負った工事の下請負を行うことのすべてを制限することは,正当な理由があるとはいえず,会員に共同の取引拒絶に該当する行為をさせるものとして独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 団体として,会員はいわゆる上請行為を一切行わないことを申し合わせることは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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