1 相談者
タクシー事業者の協同組合(平成9年度)
2 相談の要旨
(1) 当協同組合(以下「当組合」という。)においては,共同経済事業として,タクシーチケットの販売等とこれに伴う組合員への利益分配,共同無線配車等を行っている。また,組合員であるタクシー会社が保有する車両については,車体の色や表示灯を統一している。
(2) 当組合のある組合員は,他の大半の組合員に比し,低い運賃を設定しており,その車体には,当組合の統一表示灯に加えて,低価格である旨を広告する独自の表示灯を掲げている。
しかしながら,他の組合員の多くは,このような独自の広告は,対外的な当組合の信用低下につながる,あるいは,相互扶助を目的とする協同組合の共同経済事業の趣旨に反するといった理由から,独自の表示灯の設置に反対している。
(3) そこで,理事会において当該組合員が独自の表示灯を掲示することに対する反対決議を行い,当該組合員がこれを受け入れない場合には,理事会決議の遵守義務を定めた定款に違反したものとして,過怠金を課すことは,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 事業者団体が,事業者団体の内部においてある事業者を不当に差別的に取り扱い,その事業者の事業活動を困難にさせることは,事業者団体における差別取扱い等(一般指定第5項)として不公正な取引方法に該当し,独占禁止法第8条第1項第5号の規定に違反する。[団体ガイドライン6-4(事業者団体における差別取扱い等)]
(2)
ア 組合として,設立の目的に沿った適正な運営のために定款を定め,組合員に遵守を求めるとともに,これに従わない者に対して制裁措置を採ること自体は,独占禁止法上問題を生じるものではない。
しかしながら,当該組合員は,共同事業の利用において,団体の定める事項に違反しているものではないにもかかわらず,その運賃が他の組合員に比して低価格である旨の表示を行うことを制限しようとするものである。低い運賃を設定するタクシーの台数が少ない状況において,表示灯の設置は,顧客獲得の有効な手段となっていると考えられるところ,組合としてこれを制限することは,組合員間の価格競争を抑制することとなると考えられる。
イ したがって,組合内部における特定の組合員に対する表示灯の設置反対決議や過怠金の徴収は,正当な理由なく特定の事業者を差別的に取り扱うものであり,このような行為は,独占禁止法第22条ただし書に照らし,適用除外の対象とはならず,独占禁止法上問題となるおそれがある。
4 回答の要旨
組合が,低価格を表示する会員の広告を制限することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。