1 相談者
特殊紙の卸売業者の団体(平成7年度)
2 相談の要旨
(1) 特殊紙とは,模様や色が付いている用紙のことであり,主な用途は本の表紙,封筒,各種カタログ等であるが,多品種・小ロット生産ということもあり,上質紙等の普通紙と比べるとコストの高い用紙である。顧客である印刷会社や出版会社などとの取引においては,見本用紙の提供を求められることが多く,会員は無償で提供に応じている。
しかし,顧客の中には,印刷機械との適性を調べるためとして,数百枚の現物見本用紙の提供を要求する業者もおり,会員の中からは,特殊紙自体の価格が長年据え置かれている下では,これら大量の現物見本用紙の無償提供が経営上負担となっているため,その改善を求める声が出ている。
(2) そこで,当団体として,一定量以上の現物見本用紙については有償提供とすることを決定し,従来の取引慣行の改善について顧客に理解を求めることを考えているが,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 事業者団体が,構成事業者が供給し,若しくは供給を受ける商品若しくは役務の価格を決定し,又はその維持若しくは引上げを決定し,これにより市場における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反する。また,市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,原則として独占禁止法第8条第1項第4号の規定に違反する。
ここで「価格」とは,料金,手数料,金利等その名称や形態のいかんを問わず商品又は役務の対価であるものを指しており,割戻し,値引き等実質的に価格の構成要素となるものを含む。
[団体ガイドライン1-1(価格等の決定),1-(3)(価格制限行為における「価格」)]
(2) 現物見本用紙の提供に要する費用は,価格の構成要素となり得るものであり,これを有償とするかどうかは,個々の会員が自主的に判断すべきものであって,団体として現物見本用紙提供の有償化を決定することは,独占禁止法上問題となる。
なお,会員の取引先に対し,現物見本用紙の無償提供が会員の負担となっている実情を訴え,取引慣行の一般的な改善について理解を求めることは,それにとどまる限り独占禁止法上問題ない。
4 回答の要旨
団体が,現物見本用紙の有償化を決定することは,独占禁止法上問題となる。