公正取引委員会は,独占禁止法違反行為の未然防止と事業者及び事業者団体(以下「事業者等」という。)の適切な活動に役立てるため,各種のガイドラインを公表し,どのような行為が独占禁止法上問題となるのかを明らかにするとともに,個別の相談に対応してきている。
このような相談については,独占禁止法に関する理解を一層深めることを目的として,相談者以外にも参考となると思われる相談の概要を,主要な相談事例として取りまとめて公表してきており,本年も,法運用の考え方を具体的かつ分かりやすく示すものとして,事業者等の活動に関する最近の相談事例(平成16年4月~平成17年3月)を取りまとめ,『独占禁止法に関する相談事例集(平成16年度)』として公表することとした。
なお,事業者等の活動に関する主要なガイドラインは,次のとおりである。
- 流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(流通取引慣行ガイドライン)(平成3年7月策定)
- 共同研究開発に関する独占禁止法上の指針(共同研究開発ガイドライン)(平成5年4月策定)
- 事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針(事業者団体ガイドライン)(平成7年10月策定)
- 特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針(特許ノウハウガイドライン)(平成11年7月策定)
- リサイクル等に係る共同の取組に関する独占禁止法上の指針(リサイクルガイドライン)(平成13年6月策定)
1 相談制度の概要
公正取引委員会は,事業者等からの電話,来庁等による相談を受け付け,相談者が実施しようとする具体的な活動について独占禁止法上の問題点を検討し,回答するとともに,問題点の解消のための指摘を行っている。
このような一般的な相談のほか,一定の様式によってなされた具体的な相談に対し,文書により回答するとともに,相談者名並びに相談及び回答の内容を公表する「事前相談制度」が設けられている。
2 事業者等の活動に関する相談件数
平成16年4月以降平成17年3月末までに,電話,来庁等によって受け付けた事業者からの相談件数は1,350件,事業者団体からの相談件数は432件であり,相談の内容別に整理すると,下表のとおりである。
平成15年 | 平成16年 | |
---|---|---|
事業者の活動に関する相談
|
1,126 ( 881) ( 58) ( 27) ( 99) ( 61) |
1,350 ( 1,023) ( 99) ( 45) ( 84) ( 99) |
事業者団体の活動に関する相談 | 457 | 432 |
3 相談事例集の内容及び性格
(1) 事業者等の活動に関する相談の内容には,各種のガイドラインにおいて考え方が示されている行為類型に係るものから,ガイドラインの対象となっていないものまで,様々なものがあるが,この相談事例集では,独占禁止法に関する相談から,企業結合に関するもの(別途,毎年,経済取引局企業結合課が主要な相談事例として公表している。)を除いた中で,他の事業者等の参考となると考えられるものを掲載している。
(2) この相談事例集における相談の概要については,相談者の秘密保持に配慮し,相談者等を匿名にした上で,今後の事業活動の参考となるよう分かりやすくするため加筆等を行った上で取りまとめたものであり,必ずしも実際の事案と一致するものではない。
(3) 相談に対する回答は,相談者から提示された内容に基づき,その限りにおいて独占禁止法上の考え方を判断したものである。また,相談への回答において独占禁止法上問題ないと回答したものは,当該事例について,相談者の市場における地位,市場の状況,商品の特性等を個別に判断した結果であり,必ずしも他の事業者等の場合にそのまま当てはまるものではない。