4 映像機器の廉売による販売促進キャンペーン

 映像機器メーカーが,販売促進活動のため期間及び台数限定の下,通常の10分の1の価格で映像機器を販売することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 A社(映像機器メーカー)

2 相談の要旨

(1) A社は,フイルムを用いて映像を記録する映像機器Xのメーカーであり,映像機器Xの販売市場におけるシェアは10%(第5位)である。当該市場においては,A社のほか競争事業者が5社存在しており,映像機器Xの年間総販売台数は5,000台である。

(2) A社は,映像機器Xの新機種を開発したことから,販売促進活動として,通常100万円で販売している映像機器Xを,3ヶ月間に限り,販売台数100台を上限として,10万円で販売することを企画している。A社における映像機器Xの販売原価は60万円であり,これを下回る価格で販売することとなるが,独占禁止法上問題ないか。

(3) なお,A社の映像機器Xで用いることのできるフイルムは,A社の専用のものに限られ,他社製のフイルムは使用できない。A社は,専用フイルムを継続的に売上げることで,映像機器Xの費用を4年で回収できる。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 本件対象製品は映像機器Xであることから,本件では,映像機器Xの販売における競争に及ぼす影響について検討する。

(2) 一般に,事業者が供給に要する費用を下回る価格で販売する行為については,単に価格が供給に要する費用を下回ることのみならず,競争への影響や,当該廉売を行う理由等を総合的に勘案して,市場における競争に及ぼす影響について検討される。事業者が正当な理由なく,供給に要する費用を著しく下回る価格で継続して販売し,その他不当に低い価格で販売することにより,他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある場合は,不公正な取引方法(第6項・不当廉売)として問題となるおそれがある。

(3) 本件は,映像機器Xの新機種について,供給に要する費用を下回る価格で販売されるものであるが,本件キャンペーンの期間は3ヶ月と限られており,かつ,販売台数は100台を上限としていることから,他の事業者に与える影響は限定的であると認められるものであり,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 A社が,販売促進活動のため,3ヶ月間に限り,販売台数100台を上限として,通常価格の10分の1の価格で映像機器Xを販売することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

ページトップへ