11 事業者団体によるリサイクルシステム運営上の基準設定

 建設部品メーカーの団体が運営するリサイクルシステムにおいて,処理業者の地理的設置基準を設けることは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 A協会(建設部品Xのメーカーの団体)

2 相談の要旨

(1) A協会は,建設部品Xのメーカーの団体であり,建設部品Xを製造する事業者はすべて会員となっている。

(2) 建設部品Xについてリサイクルの促進が求められていることから,A協会は,次のようなリサイクルシステムを構築している。

[1] A協会は,使用済み建設部品Xの受入れ及び処理を適正に行う旨を約した処理業者との間で契約を取り交わし,建設部品Xのユーザーからリサイクルについて問い合わせを受けた場合には当該処理業者を紹介するとともに,A協会のリサイクルシステムの広報に努める。

[2] ユーザーは,処理業者に対して,処理費用を支払い,排出品の処理を委託する。

[3] 処理業者は,排出品を分別・洗浄・粉砕し,処理品としてリサイクル協力会社(再生原料,再生品のメーカー)や会員事業者に販売する。

[4] リサイクル協力会社や会員事業者は,処理品から再生原料や再生品Xを製造する。

 なお,建設部品Xのリサイクル率は60%であるところ,A協会のリサイクルシステムによる処理はそのうちの半分であり,残りの半数は,他のリサイクル活動によって処理されている。

(3) 現在,A協会が契約している処理業者は5社にとどまり,受入れ困難な地域があるなどリサイクルが非効率的であることから,今後は処理業者との契約数を増やし,全国的に排出品の受入れを可能にしたいと考えている。
 しかし,処理業者においては,建設部品Xのリサイクルを行うには排出品の粉砕設備について多額の投資が必要となるため,これまでは採算性等を考慮し,契約検討の段階で辞退する事業者が多かった。
 そのため,A協会は,契約数を増やすに当たり,処理業者の収入を確保して投資費用が回収できるよう,以下のような地理的設置基準を設けることとしたいが,独占禁止法上問題ないか。

 【設置基準】

[1] 処理業者との契約は原則として1県に1社までとする。

[2] 設置後においては,以下の場合を除いて,追加設置には応じない。

  •  既契約会社との契約を解除した場合
  •  既契約会社が追加設置を認めた場合
  •  需要増加により追加設置が必要になった場合

3 独占禁止法上の考え方

(1) 本件は,A協会が構築する建設部品Xのリサイクルシステムにおいて,処理業者の地理的設置基準を定めるものであることから,本件では,建設部品Xのリサイクルにおける競争に及ぼす影響について検討する。

(2) 一般的にリサイクルへの取組自体は,使用済み品の再生化という社会公共的な目的のためのものであり,事業者が共同し又は事業者団体において取組を行っても,それが直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
 他方,事業者団体がリサイクルシステムを構築する場合に,当該システムの実効性を確保するためリサイクル事業者の選定に一定の基準を設けることについては,これにより既存のリサイクル事業者(廃棄物の回収・運搬業者,再資源化業者等)の事業活動が困難となり,又は他の事業者が参入することが困難となる場合は,独占禁止法上問題となる(第8条第1項第1号,第3号)。

(3) 現状では,建設部品Xのリサイクル率60%のうちA協会のリサイクルシステムによる処理はその半分にとどまり,また,将来的なリサイクル率の上昇もあり得ることから,本件制限が課されても,他の処理業者の事業活動を困難にするおそれがあるとは認められない。
 さらに,本件の地理的設置基準は,A協会が,リサイクルの効率化を目的として,処理業者が懸念する設備投資に係る費用の回収を確保するために設けるものであり,また,その基準があらかじめ数値等により明確化されるなど,客観性,公平性が確保されていることから,不当とまでは認められない。
 したがって,本件地理的設置基準は,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

(4) しかし,A協会のリサイクルシステムによる処理が高いシェアを占めるようになった後においては,本件地理的設置基準が他の処理業者の事業活動に影響を及ぼし,独占禁止法上問題となるおそれがある。

(5) なお,本件地理的設置基準を設けることの必要性は,契約した処理業者の設備投資に係る費用を回収させることにより,A協会のリサイクルシステムの実効性を確保する点に認められるものであり,本件地理的設置基準が費用回収の後においてまで設けられる必要性は認められない。
 したがって,地理的設置基準については,契約した処理業者が設備投資に係る費用を回収するために必要な合理的期間に限るものとし,それ以降は一定期間ごとに取引条件に基づく契約相手の選定を行い,さらに,市場の状況も踏まえ,同一地域内でも複数の事業者と契約するなど,新規参入を促進し,より事業者間の競争を促すような取組にしていく必要がある。

4 回答の要旨

 A協会が運営するリサイクルシステムにおいて,処理業者の地理的設置基準を設けることは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
 しかしながら,今後,本件リサイクルシステムが高いシェアを占めるようになった後においてまで地理的設置基準を設け,これにより他の処理業者の事業活動に影響を及ぼす場合には,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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