ジェット燃料の供給事業者の団体が,規格等の内容や実施方法等を協議することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(ジェット燃料を供給する事業者を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1) X協会はジェット燃料の供給事業者の団体であり,国内でジェット燃料を供給する事業者のほとんどすべてが加盟している。ジェット燃料のうち空港施設会社が所有する共同利用施設(給油施設)に納入されているもの(以下単に「ジェット燃料」という。)については,各会員事業者は需要者とジェット燃料の購入数量,価格及び期間を取り決めた上で共同利用施設に搬入し,需要者は適宜共同利用施設からジェット燃料の供給を受けている。このジェット燃料は,共同利用施設に搬入された時点で各会員事業者の製品が混合されることから,各会員事業者は国際的に共通の規格等に沿った製品を供給している。

(2) Y協議会は,各国の国際石油資本(石油メジャー)及び航空機メーカー等が加盟する国際的な団体であり,ジェット燃料の品質管理に関する様々な規格等を定め,参加事業者等に対して情報提供をしている。Y協議会が定める規格等は事実上世界標準として機能し,多くの国において当該規格等に準拠した取扱いがなされている。Y協議会が定める規格等は,最新技術に応じて随時改定されるため,各事業者等は,Y協議会の規格等の改定に関する最新情報を迅速に入手して対応する必要がある。

(3) これまでY協議会が定める規格等の情報については,X協会の各会員事業者が独自に情報を収集して対応してきている。しかしながら,安全性の一層の確保のためには,Y協議会が定める規格等に各社が迅速かつ確実に対応することが必要不可欠であることから,X協会はY協議会が新たに定める規格等の情報を収集し各会員事業者に提供するとともに,その規格等への対応を図るために各会員事業者の間で規格等の内容及び実施方法について協議することを計画している。
 なお,前記協議にはX協会の会員事業者だけでなく,需要者などジェット燃料の取引に関連する会員事業者以外の事業者も参加する。

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 一般に,事業者団体が需要者の利便性に資することを目的として,当該産業に関する技術動向等の客観的な情報を収集し,各会員事業者に提供すること,また,このような情報活動に基づいて,需要者の利益に合致した規格の標準化に関する自主的な基準を設定することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

 【参考】

 政府機関,民間の調査機関等が提供する当該産業に関連した技術動向,経営知識,市場環境,立法・行政の動向,社会経済情勢等についての一般的な情報を収集し,提供することは,原則として独占禁止法違反とならない。
 [事業者団体ガイドライン9-3(技術動向,経営知識等に関する情報の収集・提供)]

 需要者の利益に合致した規格の標準化に関する自主的な基準を設定すること(7-2又は7-3に該当する場合を除く。)は,原則として独占禁止法違反とならない。
[事業者団体ガイドライン7-5(規格の標準化に関する基準の設定)]

(2) 本件では,

ア Y協議会が定めるジェット燃料の規格等は事実上の世界標準となっていることに加え,各会員事業者のジェット燃料が共同利用施設で混合されるというジェット燃料の取引の特性を前提とすれば,ある程度,ジェット燃料の品質規格等の統一を図る必要性があること

イ X協会の取組は,安全性の確保に資する世界標準に沿ったジェット燃料が得られることから,需要者の利益を不当に害するとは考えられないこと

から,本件X協会の取組は,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X協会が,Y協議会が定めるジェット燃料の規格等の情報を収集し,当該規格等の内容及び実施方法等を協議することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

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