6 事業者団体による会員に対する経営指導

 自動車・産業用機械の部材・部品メーカーの団体が,会員に対して原価計算や見積りに係る経営指導を行うことは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(自動車・産業用機械の部材・部品メーカーの団体)

2 相談の要旨

(1) X協会は,自動車・産業用機械Aのメーカーに対して部材・部品を供給している事業者の約70パーセントが加盟している団体である。

(2) X協会の会員事業者のほとんどは中小事業者であり,原価計算の方法等経営に関する知識を十分に有していないなどの理由から,自ら事業活動の改善を図ることが困難であり,取引先である自動車・産業用機械Aのメーカーが示す価格を受け入れざるを得ないような状況にある。

(3) 自動車・産業用機械業界を所管する省庁は,自動車・産業用機械A用部材・部品のメーカーが事業活動を改善することは,当該業界だけではなく,他の業界への波及効果が期待できることから,X協会に対して,会員である部材・部品製造業者が事業活動の改善に自主的に取り組むための方策を講じるよう要請を行った。

(4) X協会は,前記(3)の要請を受け,会員事業者が自ら原価計算や代金の積算を行うためのソフトを開発して,希望する会員事業者に提供し,併せて当該ソフトを用いた経営指導を行うことを検討している。
 なお,当該ソフトの内容は,原価計算や費用の積算に必要な項目があらかじめ示されており,会員事業者がそれぞれの項目に自らの事業活動で用いる原材料等の単価,重量等を入力すれば,自動的に原価計算ができるというものである。

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 一般に,中小事業者の団体が原価計算や積算について標準的な項目を掲げた一般的な方法を作成し,これに基づいて原価計算や積算の方法に関する一般的な指導又は教育を行うことは,事業者間に価格や積算金額についての共通の目安を与える場合を除き,原則として独占禁止法違反とならない。

【参考】 原価計算や積算について標準的な項目を掲げた一般的な方法を作成し,これに基づいて原価計算や積算の方法に関する一般的な指導又は教育を行うことは,原則として独占禁止法違反とならない(事業者間に価格や積算金額についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)。[事業者団体ガイドライン10-4(原価計算の一般的な方法の作成等)]

(2) 本件は,X協会が中小の会員事業者に対して,原価計算や積算に関するソフトを提供して経 営指導を行うものであるところ,X協会の取組のうち,X協会が提供するソフトは,原価計算や積算に必要な項目を示すのみであり,各項目に入力する単価は, 各会員事業者が,自らの判断で決めることとなっていることから,当該ソフトを提供すること自体は,価格や積算金額について共通の目安を与えるおそれがあるものとは認められない。

(3) 当該ソフトを用いて経営指導等を行うことについては,単に当該ソフトの使用方法等を一般的に指導するものであれば,価格や積算金額について共通の目安を与えるものと認められない。

4 回答の要旨

 X協会が,会員に対して原価計算や積算の方法に関するソフトを提供し,原価計算や見積りに係る経営指導を行うことは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

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