非鉄金属製品のメーカーの団体が,会員事業者の取引先に対して,取引基本契約書の締結を求めるなど,取引慣行の改善依頼を行うこと,また,会員事業者に対して,モデル契約書を作成配布することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X協会(非鉄金属製品Aのメーカーの団体)
2 相談の要旨
(1) X協会は,非鉄金属製品Aのメーカーのほとんどすべてが加盟している団体である。
(2) X協会の会員事業者の約半数は中小事業者であり,会員事業者のほとんどは,これまで,取引先である問屋と契約書を締結せずに取引している状況である。近年,企業の法令遵守意識の高まりや監査法人から改善を求められていることから,各会員事業者は,それぞれの取引先に対して,契約書を締結することを依頼しているが,問屋の多くは複数のメーカーと取引しており,問屋の購買力が強いため,受け入れてもらえない状況である。
(3) また,近年,非鉄金属製品Aの原料である非鉄金属の国際価格の急騰に伴い,会員事業者の問屋に対する売り掛けによる販売額も急増してきており,取引の安全を確保するため,これまでにも増して問屋に対する与信管理が重要になってきている。
(4) X協会は,このような状況を踏まえ,取引先である問屋に対し,[1]会員事業者との取引基本契約書の締結及び[2]会員事業者に対する財務内容を示す諸表の開示を依頼する文書を作成し,会員事業者を通じて,配布することを検討している。
併せて,X協会は,取引基本契約書のモデルを作成し,会員事業者のうち中小事業者に対し配布することを検討している。
なお,本件文書の取引先への配布及び取引基本契約書のモデルの使用は会員事業者の任意である。
このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 本件文書については,会員事業者の取引におけるトラブルの未然防止,取引の安全性を確保するため,[1]取引基本契約書の締結及び[2]財務内容を示す諸表の開示を会員事業者の取引先に対して依頼するにとどまるもので,取引慣行の改善について理解を求める内容の文書であり,会員事業者の任意の判断において取引先に配布されるものである限り,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
(2) また,取引基本契約書のモデルを作成し,会員事業者に配布することについても,具体的な取引条件の内容に関与せず,特定の事業者に対して差別的な内容ではなく,その使用が会員事業者の任意の判断にゆだねられている限り,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
〔事業者団体ガイドライン 8-7(取引条件明確化のための活動)〕
4 回答の要旨
X協会の本件取組は,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。