加工食品メーカーの団体が,取引先小売業者に対し,業界の窮状を訴える文書を発出すること自体は,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X協会(加工食品Aのメーカーの団体)
2 相談の要旨
(1) X協会は,全国の加工食品Aのメーカーの約半数が加盟している団体であり,会員のほとんどが中小事業者である。
(2) 加工食品Aについては,穀物価格の高騰に伴う原材料費の値上がりや原油価格の高騰に伴う容器代,運送費等の値上がりのため,その製造コストは大幅に上昇しているが,取引先小売業者は低価格競争を行っていることから,そのしわ寄せを受ける各会員事業者の経営は非常に苦しい状況にある。
(3) このような状況を踏まえ,X協会としては,原材料費等の高騰の状況を知ってもらうとともに,会員事業者の窮状を理解してもらうため,次のような要請文書を作成し,X協会から取引先小売業者に対し配布することを検討している。
このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 一般に,事業者団体が,業界の窮状を訴える文書を作成し,取引先に配布することは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。しかしながら,文書の内容は業界の窮状を訴えるものであっても,当該文書の作成等を契機として会員事業者間で競争制限的な行為が行われるような場合には,独占禁止法上の問題を生じることとなり,事業者団体においてこのような文書を作成するに当たっては慎重な対応が必要である。
(2) 本件文書については,原材料費等の高騰を取引先に周知し,会員事業者の窮状を訴える内容にとどまるものであることから,文面上,独占禁止法上問題となるおそれがあるような部分はみられず,X協会が本件文書を作成し,取引先小売業者に配布すること自体は,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
(3) しかし,文面上,特段の問題がない場合であっても,本件文書の作成等を契機として,価格の引上げ等について,会員事業者間で共通の意思が形成されるなど,競争制限的な行為が行われるような場合には,独占禁止法上問題となるおそれがある。
4 回答の要旨
X協会が,本件文書を作成し,取引先会員事業者に配布することは,それ自体,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。
しかし,文面上,特段の問題がない場合であっても,本件文書の作成等を契機として,価格の引上げ等について,会員事業者間で共通の意思が形成されるなど,競争制限的な行為が行われるような場合には,独占禁止法上問題となるおそれがあるので,X協会は,本件文書を作成し,配布する際は,その旨会員事業者に周知を図ることが望ましい。