繊維メーカーが,外国事業者が製造する繊維の国内における総代理店となり,我が国で独占的に販売することは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社(繊維メーカー)

2 相談の要旨

(1) X社は,繊維Aの製造・販売を行う事業者である。
 Y社は,外国に所在する事業者であり,今後,繊維Aの製造・販売を開始することを予定しているが,X社等他の繊維メーカーと比べれば,繊維の製造に関する技術力が低く,我が国において十分な販路・販売ノウハウを有していない。

(2) 繊維Aは,繊維A1と繊維A2に大別されるところ,繊維A1は,繊維A2に比べて品質が高く,繊維A1の製造には繊維A2の製造に比べて高い技術が必要であるとされている。また,繊維A1と繊維A2は,性能的には共通する部分もあるものの,繊維A1は繊維A2の約10倍の価格で販売されていることから,繊維A1と繊維A2との間に代替関係はない。

(3) X社が製造する繊維Aは全て繊維A1であり,X社は繊維A2の製造設備を持っていない。また,X社は我が国における繊維A1の販売市場における極めて有力な事業者である。
一方,Y社は,現在の技術力では繊維A1を製造することができないため,Y社が製造する製品は,全て繊維A2である。

(4) 我が国において,今後,繊維A2の需要の拡大が見込まれている。そこで,X社は,Y社との間で繊維Aについての総代理店契約を締結し,Y社が製造する繊維A2を我が国で独占的に販売することを検討している。

 このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 競争関係にある事業者間において総代理店契約が締結されることがある。供給業者が自ら又は他の事業者を通じて参入すればより有効な競争単位としての機能を発揮し,市場における競争がより一層促進されることが期待されるところ,競争者間で総代理店契約が締結されると,これらの間の競争がなくなったり,また,総代理店となる事業者の市場における地位が一層強化,拡大されたりすることにより,市場における競争が阻害されることがある。競争阻害効果が生じるかどうかは,個別具体的なケースに即し,総代理店となる事業者のシェア等を総合的に考慮して,市場の競争に与える影響の程度を判断することとなり,競争阻害効果が生じると認められる場合には,不公正な取引方法に該当し,違法となる(不公正な取引方法第12項〔拘束条件付取引〕,独占禁止法第19条)(流通取引慣行ガイドライン第3部第1)。

(2) しかし,本件総代理店契約は,現状,X社が製造する繊維A1とY社が製造する繊維A2との間に代替関係はなく,両社は競合していないことから,我が国における繊維A1及び繊維A2の販売市場における競争に悪影響を与えるおそれはなく,独占禁止法上問題となるものではない。
また,本件総代理店契約によって,Y社が製造する繊維A2の販売が新たに開始されれば,我が国における繊維A2の販売市場における競争が活発になることが期待される。

(3) なお,本件が,我が国における繊維A1の販売市場における極めて有力な事業者であるX社の取組であることからすれば,今後,Y社の技術力が向上し,Y社において繊維A1の製造が可能となるなど,X社とY社が競合する関係になった場合には,独占禁止法上の判断が変わり得る。

4 回答の要旨

 X社が,Y社が製造する繊維Aの国内における総代理店となり,我が国で独占的に販売することは,独占禁止法上問題となるものではない。
 なお,今後,Y社の技術力が向上し,Y社において繊維A1の製造が可能となるなどの場合には,独占禁止法上の判断が変わり得ることに留意されたい。

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