検査機器メーカーが,一部の検査機器について,自社による製造を取りやめ,その全量を競争業者からOEM供給を受けることは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X社(検査機器の総合メーカー)
2 相談の要旨
(1) X社及びY社の2社(以下「2社」という。)は,いずれも検査機器Aを含む様々な種類の検査機器を製造・販売する検査機器の総合メーカーである。我が国における検査機器Aの販売市場におけるX社のシェアは約10パーセント,Y社のシェアは約90パーセントである。
(2) 検査機器Aの販売市場でシェアを伸ばすためには,より多くの製品ラインナップをそろえることが重要であるところ,X社は,製品ラインナップの面でY社に大きく劣っており,これが2社の間に圧倒的なシェアの差が生じている要因の一つとなっている。
(3) 最近,我が国の検査機器Bの販売市場において約60パーセントのシェア(第1位)を占めるZ社が,検査機器Aの製造・販売を開始した。Z社の製造する検査機器Aは軽量であり性能も高いこと及び検査機器Aは検査機器Bと同じ製造ラインで製造できることから,今後,Z社が検査機器Aの販売市場においてシェアを伸ばすことが見込まれている。
(4) X社の検査機器Aの販売数量は年々落ち込んできており,今後も拡大する見込みはない。
(5) X社は,検査機器Aの製造・販売事業からの撤退も検討したが,検査機器の総合メーカーとして顧客の要望に応えるためには,自社ブランドの検査機器Aを販売し続けることは必須であると考え,今後は,自社による検査機器Aの製造を取りやめ,Y社が製造している検査機器AのOEM供給を受け,それをX社のブランドで販売することを検討している。
(6) 2社は,このOEM供給を行う場合には,秘密保持契約を締結し,互いの検査機器Aの販売価格,販売先等には一切関与せず,独自に販売を行う。
このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 本件は,X社が,検査機器Aの販売市場において競争関係にあるY社から検査機器Aの全量OEM供給を受けるものであり,このような取組によって,一定の取引分野における競争が実質的に制限される場合には,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項,第3条)として問題となる。
(2) 本件は,我が国の検査機器Aの販売市場における合算シェアがほぼ100パーセントとなる2社の間でOEM供給が行われるものであるが
ア 検査機器Aの製造事業から撤退せざるを得ないとしているX社に対するOEM供給であること
イ 本件OEM供給によってX社の製品ラインナップが充実すれば,2社の間の販売競争が活発化することが期待されること
ウ 2社は,互いに検査機器Aの販売価格,販売先等には一切関与せず,それぞれ独自に販売を行うとしていること
エ Z社が検査機器Aの製造・販売を開始したことにより,今後は2社にZ社を加えた3社による活発な競争が期待されること
から,本件OEM供給は,我が国の検査機器Aの販売市場における競争を実質的に制限するものではない。
4 回答の要旨
X社が,検査機器Aについて,自社による製造を取りやめ,その全量をY社からOEM供給を受けることは,独占禁止法上問題となるものではない。