複数の映像コンテンツメーカーが,法人ユーザー向け営業活動を共同出資会社に一括して行わせるとともに,当該会社と共同して,法人ユーザーに対する販売価格を決定することは,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例
1 相談者
映像コンテンツAのメーカー
2 相談の要旨
(1) 映像コンテンツAのメーカー6社(以下「6社」という。)は,映像コンテンツAを制作し,後述のX社を通じて法人ユーザー向けに販売している。映像コンテンツAの法人ユーザー向け販売市場における6社の合算シェアは,約70パーセントである。
(2) 映像コンテンツAの配信には特殊な技術が,また,販売には免許が必要であることから,6社は,各種コンテンツの専門の配信業者であり当該免許を保有するX社に映像コンテンツAの配信及び販売を委託している。一方,X社は,法人ユーザー向けの営業部門を有していないことから,これまで,6社がそれぞれ法人ユーザー向けの営業活動をX社から受託し,個々に法人ユーザーに対し映像コンテンツAの営業活動を行ってきた。
(3) 今般,映像コンテンツAを含む各種映像コンテンツの配信規格が改定されることとなった。映像コンテンツAの販売価格は下落傾向にあるところ,新たな配信規格の下では映像コンテンツメーカー間での映像コンテンツAの品質差が縮まることが予想され,6社は,これまでどおり6社が個々に法人ユーザー向け営業活動を行うと,価格競争が激化し,更に販売価格が下落してしまうのではないかと懸念している。
(4) そこで,6社は,映像コンテンツAの販売価格の下落を避けるため
ア 過去に6社が共同出資によって設立した会社であるY社に,X社から,映像コンテンツAの法人ユーザー向け営業活動を一括して受託させる
イ 6社及びY社が共同で法人ユーザー向けの販売価格表を作成し,この販売価格表に基づき,Y社に営業活動を行わせることを検討している。
このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
6社及びY社が,法人ユーザーに対する映像コンテンツAの販売価格の下落を避けるため,共同して法人ユーザー向けの販売価格表を作成し,それに基づきY社に営業活動を行わせることは,映像コンテンツAの法人ユーザー向け販売市場における価格競争を制限するものであり,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項,第3条)として,独占禁止法上問題となるおそれがある。
4 回答の要旨
6社が,映像コンテンツAの法人ユーザー向け営業活動をY社に一括して行わせるとともに,Y社と共同して,法人ユーザーに対する販売価格を決定することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。