7 事業者団体による許諾料の算定の基礎となる掛け率の目安の表明

 電子コンテンツに係る著作権者等を会員とする団体が,会員が電子コンテンツを利用して事業を営む者から収受する許諾料の算定の基礎となる掛け率の目安を示すことは,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例

1 相談者

 X協会(電子コンテンツAに係る著作権者等を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1) X協会は,電子コンテンツAに係る著作権者等を会員とする団体である。

(2) 電子コンテンツAを消費者に提供する事業を営む者(以下「電子コンテンツ事業者」という。)は,当該事業を行う際,会員の著作物の利用等をする場合には,会員に対し許諾料を支払っているところ,この許諾料は,一般に,次のように算出されている。

 許諾料=(電子コンテンツ事業者の売上額)×(掛け率)

(3) これまでのところ電子コンテンツAは消費者に浸透しておらず,電子コンテンツ事業者の売上額は低迷している。そこで,電子コンテンツ事業者は,許諾料を低く抑え収益を増加させるために,現状の掛け率をできる限り低いものに変更したいと考えている。また,これから電子コンテンツAを消費者に提供する事業を開始しようとしている者も,できる限り低い掛け率を設定し高い収益性を確保した上で,当該事業を開始したいと考えている。
一方で,会員は,できる限り高い掛け率にしたいと考えている。

(4) そこで,X協会は,両当事者が妥当と考える掛け率の差異を解消するために,X協会が標準的であると考える掛け率(以下「標準掛け率」という。)を両当事者に示し,この標準掛け率を参考としてもらうことを検討している。

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 事業者団体が,標準価格,目標価格等価格設定の基準となるものを決定することにより,市場における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1号の規定に違反する。また,市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,原則として独占禁止法第8条第4号の規定に違反する(事業者団体ガイドライン第2-1-(1)-3〔標準価格等の決定〕)。

(2) 許諾料の額は,その価格で許諾すれば利益が得られるか否か,又はその価格で許諾を受ければ利益が得られるか否かといった,会員及び電子コンテンツ事業者それぞれの立場での判断を通じて,個別の交渉により決定されるべきものである。X協会が標準掛け率を定めることは,許諾料の額について会員間に共通の目安を与えるものであり,電子コンテンツAの著作物の利用等の許諾に係る競争を制限し,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 X協会が,会員が電子コンテンツ事業者から収受する許諾料の算定の基礎となる掛け率の目安を示すことは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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