機械製品のメンテナンス業者を会員とする団体が,会員が販売するメンテナンスのサービスについて,ユーザーからの前払代金の徴収等のサポート業務を管理会社に行わせることとし,会員が当該管理会社に支払う手数料について一括して当該管理会社と交渉することは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(機械製品のメンテナンス業者を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1) X協会は,a地区に所在する機械製品Aのメンテナンス業者を会員とする団体であり,a地区に所在する中小事業者のほとんどが加盟している。a地区には,全国展開を行っている複数の大規模事業者の支店も存在するが,当該大規模事業者はX協会に加盟していない。

(2) 機械製品Aは,定期的にメンテナンスを行う必要があるため,機械製品Aのメンテナンス業者のうち多くの大規模事業者は,複数回のメンテナンスサービスを1つのセットとして提供することにより割得感を出したパックサービス(以下「パックサービス」という。)を独自に販売しており,ユーザーからも好評を得ている。
一方で,パックサービスの販売を行うには,前払代金の保管,ユーザーへのメンテナンス時期の案内等のサポート業務(以下「サポート業務」という。)に手間が掛かるため,中小事業者の中でパックサービスの販売を行っている者は少ない。

(3) そこで,X協会は,会員がパックサービスを販売しやすくするため,次のようなメンテナンスパック(以下「協会パック」という。)を提案することを考えている。
ア 会員は,共通の名称でパックサービスをユーザーに販売する。
イ サポート業務は,第三者である管理会社に委託する。
ウ 会員が管理会社に支払う手数料は,X協会が一括して当該管理会社と交渉して決定する。

(4) 相談者によれば,会員が管理会社に支払う手数料の額は,協会パックの販売金額の約5パーセントにとどまるとのことである。

(5) 協会パックを販売するか否かは個々の会員の自由であり,会員が協会パックを販売するとしても,それとは別に,会員が1回メンテナンスを行うごとにユーザーから料金を徴収すること及び会員独自のパックサービスを販売することは妨げられない。また,X協会は,会員が行う協会パックの販売に直接関与しないため,会員は,協会パックの販売価格及びメンテナンス等の内容を自由に設定できる。

 このようなX組合の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)本件は,X協会が,会員である機械製品Aのメンテナンス業者の販売活動に関与するものであり,これが,機械製品Aのメンテナンス業者間の競争に悪影響を及ぼす場合には,独占禁止法上問題となる(独占禁止法第8条第1号,第3号又は第4号)。

(2)本件は,X協会が,会員が販売する協会パックについて,サポート業務を管理会社に行わせることとし,会員が当該管理会社に支払う手数料について一括して当該管理会社と交渉するものであるところ
ア X協会の会員は全て中小事業者であって,本件取組により中小事業者がパックサービスを販売しやすくなること
イ X協会が管理会社に支払う手数料について一括して当該管理会社と交渉するため,会員が当該管理会社に支払う手数料は同一となるものの,当該手数料の額は,協会パックの販売金額の約5パーセントにとどまること
ウ 会員が1回メンテナンスを行うごとにユーザーから料金を徴収すること及び独自のパックサービスを販売することは妨げられず,また,会員は,協会パックの販売価格やメンテナンス等の内容を自由に設定できること
から,機械製品Aのメンテナンス業者間の競争に悪影響を与えるものではなく,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X協会が,会員が販売するメンテナンスのサービスについて,サポート業務を管理会社に行わせることとし,会員が当該管理会社に支払う手数料について一括して当該管理会社と交渉することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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