9 事業者団体による検査機器の販売方法に関する自主基準の策定

 検査機器のメーカーを会員とする団体が,検査機器の安全性を確保するために,会員による検査機器の販売方法に関する自主基準を策定することは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(検査機器のメーカーを会員とする団体)

2 相談の要旨

(1) X協会は,検査機器Aのメーカーを会員とする団体である。X協会には我が国の検査機器Aのメーカーの全てが加盟している。

(2) 検査機器Aは,安全性を測定するための精密機器であり,正常に作動するためには,その日常点検及び定期的な消耗品交換が必要である。これまでは,検査機器Aを使用する者の数はごく僅かであったが,最近,検査機器Aに対する需要が高まり,当該機器の使用者の数が大幅に増加してきた。

(3) このように検査機器Aが急速に普及する中で,日常点検も消耗品交換も行わないままに,検査機器Aを使用する者が多くなってきた。日常点検及び消耗品交換がなされずに検査機器Aを使用している場合には,機器が正常に作動しないことがあり,その結果,適切に安全性の検査が行われず,重大事故の発生も心配される。

(4) そこで,X協会は,次のような,会員による検査機器Aの販売方法に関する自主基準を策定することを検討している。
ア 会員が検査機器Aを販売する際に用いるカタログに,[1]日常点検及び消耗品交換が必要であること,[2]会員が検査機器Aの日常点検及び消耗品交換を含む保守サービスを提供していることを明記する。
イ 会員が検査機器Aを販売及び納品する際,前記アのカタログ記載事項[1]及び[2]を顧客に説明する。
ウ 会員がこの自主基準に従うかどうかは任意である。

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 営業の種類,内容,方法等は,事業者間の競争の手段となり得るものであり,事業者団体がこれを制限することにより競争を阻害することは,独占禁止法第8条第3号,第4号又は第5号の規定に違反する行為である。また,例えば,競争制限の目的で販売方法を制限すること等により,市場における競争を実質的に制限することもあり得るところであり,このような行為は独占禁止法第8条第1号の規定に違反する(事業者団体ガイドライン第2-8-(1)〔営業の種類,内容,方法等の制限行為〕)。

(2) 本件は,X協会が,検査機器Aの販売方法に関する自主基準を策定するものであるところ
ア 重大事故の発生を未然に防止するという社会公共的な目的に基づく取組であること
イ [1]日常点検等の必要性は,検査機器Aの使用者が当然知っておくべき事項であること,[2]会員が保守サービスを提供していることは,会員が顧客に通常説明している事項であることからすれば,これらのことをカタログに記載することなどを内容とする本件自主基準は,競争手段を制限し検査機器Aの使用者の利益を不当に害するものではないこと
ウ 会員がこの自主基準に従うかどうかは任意であり,会員は重大事故発生の防止に資するそれ以外の取組を行うこともできること
エ 特定の会員に対して差別的なものではないこと
から,会員の事業活動を不当に制限するものではなく,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X協会が,検査機器Aの安全性を確保するために,会員による検査機器Aの販売方法に関する自主基準を策定することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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