13 協同組合連合会による取引条件の交渉

 農産物の生産者で組織する農業協同組合の連合会が,当該農産物の販売に際し,農業協同組合の販売先事業者と取引条件の交渉を行うことは,独占禁止法第22条による適用除外の対象となる組合の行為(組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結)とは認められず,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例

1 相談者 X協同組合連合会(農産物の生産者等で組織する農業協同組合の連合会)

2 相談の要旨

(1) X協同組合連合会は,加工食品Bの原料である農産物Aの生産者等で組織する農業協同組合(以下「単位農協」という。)で構成された全国団体である。

(2) 農産物Aは全国各地で生産されているものであり,単位農協は,県単位,市単位など地域ごとに設立されており,我が国の農産物Aの生産者のほとんど全ては単位農協の組合員である。また,加工食品Bのメーカーは多数存在しており,その中には小規模なものもいる。

(3) 単位農協はそれぞれ,加工食品Bのメーカーに対し,農産物Aを販売しており,その価格などの取引条件の交渉についても単位農協ごとに行っているところ,単位農協ごとに取引条件が異なるため,X協同組合連合会は,今後,単位農協が,農産物Aを加工食品Bのメーカーに販売するに当たり,X協同組合連合会が全てのメーカーと取引条件の交渉を行い,その結果を団体協約(農業協同組合法第10条)としてX協同組合連合会と当該メーカーとの間で締結することを検討している。
 なお,X協同組合連合会が検討している取組は取引条件の交渉についてのものであって,販売については単位農協が個々に行うとしている。

(4) 農産物Aには輸入品もあるが,消費者が国産品を選好する傾向があり,加工食品Bのメーカーにとって国産品を使用していることは重要な競争手段の一つであることから,加工食品Bのメーカーは,単位農協と取引せざるを得ない。

 ○ 本件の概要図

 このようなX協同組合連合会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とするなどの要件を備え,かつ法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為(以下「組合の行為」という。)には,独占禁止法は適用されない。ただし,不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は,この限りではない(独占禁止法第22条)。

(2) 農業協同組合が加工食品のメーカーと取引条件の交渉を行うことは,組合員の経済的地位の改善のために団体協約を締結するものと認められる場合には,独占禁止法第22条による適用除外の対象となる。
 しかしながら,適用除外の対象となる団体協約は,組合員の経済的地位の改善のためになされるものであるところ,本件においては,加工食品Bのメーカーにとって国産品を使用していることは重要な競争手段の一つであること,我が国の農産物Aの生産者のほとんど全てが単位農協の組合員であること,加工食品Bのメーカーは多数存在しており,その中には小規模なものもいること等から,単位農協が加工食品Bのメーカーに対して交渉力の面で劣るといった事情はみられず,本件の取引条件の交渉が,直ちに,全国組織であるX協同組合連合会の組合員である単位農協の経済的地位の改善のために連合会がその行為として行う団体協約の締結の過程であるとはいえないと考えられる。
 したがって,X協同組合連合会が加工食品Bのメーカーと取引条件の交渉を行うことは,独占禁止法第22条による適用除外の対象となる組合の行為とは認められず,独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第1号)。

4 回答の要旨

 X協同組合連合会が,農産物Aの販売に際し,農業協同組合の販売先事業者と取引条件の交渉を行うことは,独占禁止法第22条による適用除外の対象となる組合の行為(組合員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結)とは認められず,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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