建築資材メーカーを会員とする団体が,地球温暖化防止を目的として,温室効果を有さない新型品の商品化に伴い,温室効果を有する化学物質を原材料とする建築資材の製造販売を停止するよう取り決めることについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X協会(建築資材メーカーを会員とする団体)
2 相談の要旨
(1)X協会は,建築資材Aのメーカーを会員とする団体である。我が国における建築資材Aの販売分野におけるX協会の会員のシェアは,約70パーセントである。
(2)建築資材Aは,建設業者等に販売され,住宅の建築に用いられる。
(3)建築資材Aについては,かねてから,化学物質αを原材料とする建築資材A(以下「旧型品」という。)が使用されてきたが,化学物質αは温室効果を有することから,地球温暖化への影響が懸念されている。
(4)今般,温室効果を有さない新たな化学物質βが開発されたことから,化学物質βを原材料とする建築資材A(以下「新型品」という。)が商品化された。
現在,この新型品は,旧型品とほぼ同等の品質・価格であり,今後普及すればさらに価格が下がると見込まれている。
さらに,建築資材Aのメーカーが新型品を製造することに技術的な問題はなく,追加的な設備投資も必要ない。
(5)X協会は,新型品が商品化されたことから,旧型品の製造販売を停止するよう取り決めることを計画している。
ただし,旧型品の製造販売を停止する取決めを遵守するかどうかは,会員の任意の判断によるものとする。
- 本件の概要図
このようなX協会の取決めは,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1)事業者団体が,構成事業者が供給する商品又は役務の種類,品質,規格等に関連して,環境の保全や安全の確保等の社会公共的な目的に基づく必要性から品質に係る自主規制等の活動を行うことについては,独占禁止法上の問題を特段生じないものも多い。
しかしながら,事業者団体の活動の内容,態様等によっては,構成事業者による多様な商品又は役務の開発・供給等に係る競争を阻害することとなる場合もあり,独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第3号,第4号及び第5号)。このような活動における競争阻害性の有無については,[1]競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか,及び[2]事業者間で不当に差別的なものではないかの判断基準に照らし,[3]社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものかの要素を勘案しつつ,判断される(事業者団体ガイドライン第2の7(2))。
(2)本件は,
[1] 温室効果を有さない新型品の商品化に伴い,温室効果を有する旧型品の製造販売を停止するものであり,需要者の利益を不当に害するものではないこと
[2] 建築資材Aのメーカーが新型品を製造することに技術的な問題はなく,追加的な設備投資も必要ないことから,会員間で不当に差別的にはならないこと
[3] 地球温暖化の防止を図るという社会公共的な目的の観点から合理的に必要とされる範囲内のものと考えられること
[4] 旧型品の製造販売を停止する取決めを遵守するかどうかは会員の任意の判断によるものであること
から,会員間の競争を阻害する効果はないため,独占禁止法上問題とはならない。
4 回答の要旨
X協会が,地球温暖化防止を目的として,温室効果を有さない新型品の商品化に伴い,温室効果を有する旧型品の製造販売を停止するよう取り決めることは,独占禁止法上問題となるものではない。