運送事業者を会員とする団体が,自治体から要請された期間において,大規模災害発生時に支援側の自治体から救援物資の運送業務を一括受注して会員等に割り当てることについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X協会(運送事業者を会員とする団体)
2 相談の要旨
(1)X協会は,運送事業者を会員とする全国団体である。
(2)東日本大震災時において,被災地へ救援物資を運送した際に,被災地からの物資の注文と支援側の自治体(以下「自治体」という。)から配送された物資の内容がかみ合わず,ニーズに応じた救援物資が行き届かないなど,救援物資の運送に関する様々な問題が起こった。
(3)X協会は,今後実際に大規模災害等が起こった際に,上記(2)のような問題が生じないように,以下の取組を行うことを検討している。
ア X協会が,自治体から救援物資の運送を一括受注し,自治体の保有物資と被災地からの注文をマッチングさせた上で,当該取組に参加を希望する運送事業者の中から,被災地に最も近い運送事業者に当該注文に係る運送業務を再委託する。
なお,運送事業者が当該取組へ参加するか否かは任意であり,X協会の会員以外の運送事業者であっても登録することが可能である。
イ 本件取組の期間は,自治体が災害対策本部を設置した日から救援物資運送の終了を宣言した日までとする。
- 本件の概要図
このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1)東日本大震災のような緊急の状況に対処し,被災地に円滑に物資を供給するため,関係事業者が共同して,又は関係団体において,配送ルートや配送を担当する事業者について調整することは,[1]被災地に救援物資を円滑に輸送するという社会公共的な目的に基づくものであり,[2]物資の不足が深刻な期間において実施されるものであって,かつ,[3]特定の事業者に対して差別的に行われるようなおそれはないと考えられることから,独占禁止法上問題となるものではない(「被災地への救援物資配送に関する業界での調整について」平成23年3月18日公正取引委員会事務総局)。
(2)本件は,X協会が,自治体から要請された期間において,自治体から救援物資の運送業務を一括受注して会員等に割り当てることは,
[1] 大規模災害発生時における救援物資の運送業務という社会公共的な目的に基づくものであること
[2] 被災地に最も近い運送事業者に再委託するといった客観的な方法で委託事業者の選定を行うとしており,運送事業者間で差別的なものではないこと
[3] 大規模災害発生時において,被災地への救援物資の配送を効率的に調整できるのはX協会以外に存在しないと考えられること
[4] 当該取組への参加は任意であり,X協会の会員以外も登録できること
から,独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答の要旨
X協会が,自治体から要請された期間において,大規模災害発生時に支援側の自治体から救援物資の運送業務を一括受注して会員等に割り当てることは,独占禁止法上問題となるものではない。