マンション,アパート等の共同住宅賃貸業者が,自社の子会社を通じて電力の小売分野に参入するに当たり,入居希望者に対して,自社との賃貸契約と併せて自社の子会社との間で電気需給契約を締結することを入居の条件とすることについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X社(共同住宅賃貸業者)
2 相談の要旨
(1)X社は,マンション,アパート等の共同住宅の賃貸を行っている事業者である。
我が国の共同住宅の賃貸分野におけるX社のシェアは,約5パーセント(上位3位以内)である。
また,X社の競争事業者として,同程度のシェアを有するA社及びB社の外に,多数の共同住宅賃貸業者がいる。
(2)平成26年6月18日の電気事業法の改正により,平成28年以降,家庭向けの電力の小売が自由化されることから,X社は,自社の子会社を通じ,自社が賃貸する共同住宅の入居者に現行の一般電気事業者(注)より安く電力を供給することとしている。
(注)一般電気事業者とは,一般の需要に応じ電気を供給する事業を営むことについて経済産業大臣の許可を受けた者をいう。
なお,平成28年以降は,電気事業者の区分が変更され,経済産業大臣の登録を受けた小売電気事業者が一般の需要に応じて電気を供給することを行う事業(一般送配電事業,特定送配電事業及び発電事業に該当する部分を除く。)を営むこととなる。
(3)X社は,自社が賃貸する共同住宅への新たな入居希望者に対して,自社との賃貸契約と併せて自社の子会社との間で電気需給契約を締結することを当該共同住宅への入居の条件とすることを検討している。
- 本件の概要図
このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1)事業者が,取引の相手方に対し,ある商品又は役務(主たる商品等)の供給に併せて他の商品又は役務(従たる商品等)を自己又は自己の指定する事業者から購入させる行為は,主たる商品等の市場における有力な事業者が行い,従たる商品等の市場における自由な競争を減殺するおそれがある場合には,不公正な取引方法(一般指定第10項〔抱き合わせ販売等〕)に該当し,独占禁止法上問題となるおそれがある(同法第19条)。
(2)本件は,我が国の共同住宅の賃貸分野においてシェアが上位3位以内の事業者であるX社が,自社が賃貸する共同住宅の入居希望者に対して,当該共同住宅の賃貸に併せて自社の子会社から電力を購入させるものであるが,我が国の共同住宅の賃貸分野におけるX社のシェアは約5パーセントと限られたものであることから,従たる商品等の市場を賃貸用共同住宅の入居者向けの電力の小売分野に限定したとしても,本件行為がその分野における競争に与える影響は軽微なものと考えられ,独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答の要旨
X社が,自社の子会社を通じて電力の小売分野に参入するに当たり,入居希望者に対して,自社との賃貸契約と併せて自社の子会社との間で電気需給契約を締結することを入居の条件とすることは,独占禁止法上問題となるものではない。