測定機器メーカー5社が,共同して,測定機器の測定方法を統一することについて,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例
1 相談者
測定機器メーカー5社
2 相談の要旨
(1)我が国において測定機器Aを製造販売しているのは,測定機器メーカー5社(以下「5社」という。)のみであり,輸入品も存在しないことから,5社の合算シェアは100パーセントである。
(2)測定機器Aは,製品αの検査に用いられるものである。
5社の測定機器Aは,それぞれ公的機関の定める基準を満たしているとの認定を受けたものである。また,5社は,それぞれ自社の測定機器Aについて独自の測定方法を用いて測定精度を高めたり,付加機能を付けるなど,他社との差別化を図り,品質において競争を行っている。その結果,各社の測定機器Aの販売価格にも差が生じている。
(3)5社は,測定機器Aの測定方法について,いずれか1社のものに統一することを検討している。
- 本件の概要図
このような5社の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1)事業者が,契約,協定その他何らの名義をもってするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することは,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し,独占禁止法上問題となる(同法第3条)。
「競争を実質的に制限する」とは,「競争自体が減少して,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することによって,市場を支配することができる状態をもたらすこと」をいう(東宝株式会社ほか1名に対する件〔東京高等裁判所判決昭和28年12月7日〕)。
(2)本件は,我が国の測定機器Aの製造販売分野において100パーセントのシェアを有する5社が共同して測定機器Aの測定方法を統一するものであるが,いずれの測定機器Aも公的機関の定める基準を満たしているとの認定を受けているところ,測定機器Aの測定方法は品質を左右する極めて重要なものであり,5社の測定機器Aの品質を巡る競争を無くすことにより,我が国の測定機器Aの製造販売分野における競争を実質的に制限するものとして,独占禁止法上問題となるおそれがある。
4 回答の要旨
5社が,共同して,測定機器Aの測定方法を統一することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。