医療機器メーカーを会員とする団体が,会員に対して,中古品の医療機器のユーザーへの消耗品の販売を禁止することについて,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例
1 相談者
X協会(医療機器メーカーを会員とする団体)
2 相談の要旨
(1)X協会は,医療機器Aメーカーを会員とする団体である。
我が国における医療機器Aの製造販売分野におけるX協会の会員のシェアは100パーセントである。
(2)医療機器Aは,使用の際の安全性を確保するため,定期的な保守点検を必要とし,数年毎にバッテリー等の消耗品を交換する必要がある。
(3)医療機器Aメーカーは,それぞれ医療機器A及びその消耗品を製造し,直接,医療機関等(以下「ユーザー」という。)に販売している。
また,医療機器Aは高額であることから,ユーザーから医療機器Aを買い取り,中古品として安価で販売している販売業者が存在する。
(4)医療機器Aメーカーは,ユーザーから医療機器Aの消耗品の発注があった際には,当該ユーザーが所有する医療機器Aが中古品であるか否かにかかわらず,消耗品を販売している。
(5)X協会は,中古品の医療機器Aについては保守点検が行われていない可能性があり,安全性を確保できないとして,今後,会員に対して,中古品の医療機器Aのユーザーへの医療機器Aの消耗品の販売を禁止することを検討している。
- 本件の概要図
このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1)事業者団体が,顧客,販路等に関する制限を行い,これにより市場における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1号の規定に違反する。市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,原則として独占禁止法第8条第4号の規定に違反する(事業者団体ガイドライン第2-3〔顧客,販路等の制限行為〕)。
(2)本件は,X協会が,会員である医療機器Aメーカーに対して,中古品の医療機器Aのユーザーへの消耗品の販売を禁止するものであるところ,中古品の使用の際の安全性を確保するには,医療機器Aメーカーが中古品の保守点検の有無の確認を求めることで足り,保守点検を受けているユーザーに対する販売を禁止することに合理性は認められないことから,独占禁止法上問題となるおそれがある。
4 回答の要旨
X協会が,会員に対して,中古品の医療機器Aのユーザーへの消耗品の販売を禁止することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。