家畜の生産販売を行う事業者が,特定の取引先農家に対して販売する純粋種の家畜の目的外利用を禁止することについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X社(家畜の生産販売業者)
2 相談の要旨
(1)X社は,食肉生産用の家畜Aの繁殖に用いる交雑種の家畜A1(以下「交雑種A1」という。)を生産し,取引先農家に対して販売している。
(2)X社は,厳格な品質管理の下で,純粋種の家畜A2(以下「純粋種A2」という。)を交配させ,交雑種A1の生産を行っている。X社は,従前,純粋種A2について,自社内で交雑種A1の生産のためにのみ利用しており,外部への販売は行っていない。
(3)X社の取引先農家は,交雑種A1を交配することにより家畜Aを生産し,食肉として食品メーカー等に販売している。X社の交雑種A1を利用して生産される家畜Aの食肉は,X社のブランド名で販売され,近年,その肉質や食味について高い評価を得ており,需要の高まりからX社における交雑種A1の生産が追い付かない状況にある。また,X社は,取引先農家から,交雑種A1を自家生産できるよう純粋種A2を販売してほしいとの要望を受けている。
(4)そこで,X社は,自社と同等の厳格な品質管理ができる一部の取引先農家に限って,純粋種A2を販売することを検討している。この際,X社ブランドの信用維持の観点から,当該取引先農家に対して,純粋種A2についてX社と同じ方法でX社ブランドの交雑種A1を生産することにのみ用い,それ以外の目的で利用しないことを条件とすることを検討している。
- 本件の概要図
このようなX社の行為は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1)相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件を付けて,当該相手方と取引することは,不公正な取引方法(一般指定第12項〔拘束条件付取引〕)に該当し,独占禁止法上問題となる(同法第19条)。
(2)本件は,厳格な品質管理の下で生産した交雑種A1のみを販売し,従前,純粋種A2の販売を行っていないX社が,X社ブランドの交雑種A1を自ら生産したいという農家の要望に対応して,厳格な品質管理が可能な一部の取引先農家に限り純粋種A2を販売し,その際,X社ブランドの信用維持の観点から,X社の生産と同一の方法による交雑種A1の生産のみの利用に限定し,それ以外の目的での利用を禁止しようとするものである。取引先農家はX社ブランド名で食肉を販売することから,X社が当該条件を付すことは,それ自体公正競争阻害性を有するものではなく,独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答の要旨
X社が,特定の取引先農家に対して販売する純粋種A2の目的外利用を禁止することは,独占禁止法上問題となるものではない。