5 競合するメーカー間の相互OEM供給

 建材メーカー2社が,輸送費削減のため,相互OEM供給を行うことについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社及びY社(建材メーカー)

2 相談の要旨

(1)X社及びY社(以下「2社」という。)は,建材Aのメーカーである。

(2)建材Aは住宅等に用いられる建材である。建材Aには同じ用途に用いられる建材A1と建材A2が存在するところ,両者を合わせた総量に占めるそれぞれの割合は,建材A1が約20パーセント,建材A2が約80パーセントとなっている。
建材A2は,従前,性能の面で建材A1よりも劣っており,住宅等の性能にも影響することから,性能を重視するユーザーにとって両者には代替性がなかった。しかし,近年,建材A2の性能は大きく向上しつつあり,建材A1と建材A2とは代替的に利用されるようになってきている。

(3)我が国における建材A1の製造販売業者は2社のみであり,我が国の建材A1の製造販売分野におけるシェアはX社が約40パーセント,Y社が約60パーセントである。2社は建材A2の製造は行っていない。
X社は東日本に,Y社は西日本にそれぞれ建材A1の工場を有し,それぞれ,ユーザーである全国の建設業者に建材A1を販売している。

(4)我が国における建材A2の製造販売業者はP社,Q社,R社等多数存在し,我が国の建材A2の製造販売分野におけるシェアは,P社が約30パーセント,Q社が約30パーセント,R社が約20パーセントである。

(5)建材Aは,販売価格に占める輸送費の割合が高い。このため,2社は,自社工場から出荷すると輸送費の負担が大きい地域について,輸送費を削減するために,相互OEM供給を行うことを検討している。

(6)2社は,本件取組後も従来どおり,それぞれ独自に販売活動を行い,建材A1の販売価格,販売数量,販売先等には一切関与しない。

  • 本件の概要図

 このような2社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者が,契約,協定その他何らの名義をもってするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することは,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し,独占禁止法上問題となる(同法第3条)。

(2)本件は,我が国における建材A1の製造販売分野において合計で100パーセントのシェアを有する2社による相互OEM供給であるが,建材A1と建材A2との製造販売分野における競争が活発化してきており,両者を合わせた市場においては,
  [1] 2社の合計シェアは約20パーセントであること
  [2] 2社より高いシェアを有する有力な競争業者が複数存在すること
  [3] 2社は,本件取組後もそれぞれ独自に建材A1を販売し,互いに販売価格,販売数量,販売先等には一切関与しないこと
  から,我が国の建材Aの製造販売分野における競争を実質的に制限するものではなく,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 2社が,輸送費削減のため,相互OEM供給を行うことは,独占禁止法上問題となるものではない。

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