10 事業者団体による情報の収集及び提供

 役務を提供する事業者を会員とする団体が,法改正後の会員の役務提供に係る料金に関する情報を収集し,会員ごとの料金が具体的に分かるような形で会員等に提供することについて,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例

1 相談者

 X協会(役務提供事業者を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1)X協会は,我が国において役務Aを提供する全ての事業者を会員とする団体である。

(2)役務Aは,その性質上,需要者が一旦契約すると同じ条件で中長期にわたって継続的に利用することが多いものである。

(3)従来,役務Aについては,法律の規定により,役務Aを提供しようとする区域(以下「提供区域」という。)ごとに国からの許可を受けることとされており,通常,提供区域ごとに1事業者が許可を受けている。また,その料金は,国からの認可を受けることとされている。

(4)X協会は,各会員の情報公開等の観点から,会員の認可料金に関する情報を会員から収集して取りまとめ,会員の提供区域ごとの具体的な料金を公表し,情報として会員等に提供している。

(5)法改正により,提供区域については,国からの許可を要することなく任意の区域において自由に提供することが可能となり,また,役務Aの料金については,国からの認可を要することなく自由に設定できることとなる。

(6)X協会は,役務Aの事業が自由化された後において,従来同様,会員の料金に関する情報を収集し,会員の提供区域ごとの料金を会員等に提供することを検討している。

  • 本件の概要図

 このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者団体が,需要者,構成事業者等に対して過去の価格に関する情報を提供するため,構成事業者から価格に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して,客観的に統計処理し,価格の高低の分布や動向を正しく示し,かつ,個々の構成事業者の価格を明示することなく,概括的に,需要者を含めて提供することは,独占禁止法上問題とならない(事業者間に現在又は将来の価格についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)(事業者団体ガイドライン第2-9-5〔価格に関する情報の需要者等のための収集・提供〕)。

(2)本件は,X協会が,役務Aの料金に関する情報を収集し,会員ごとの料金が具体的に分かるような形で会員等に提供しようとするものであるところ,法改正後は,役務Aの料金は,会員が需要者ごとに自由に決定,変更することができるものとなることから,会員ごとの料金が具体的に分かるような形で会員等に提供することは,各会員に現在又は将来の料金決定について共通の目安を与えることとなり,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答の要旨

 X協会が,法改正後の会員の役務提供に係る料金に関する情報を収集し,会員ごとの料金が具体的に分かるような形で会員等に提供することは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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