貨物運送事業者を会員とする団体が,既に公表されている情報を収集し,会員に対しメール・マガジンにより提供することについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X協会(貨物運送事業者を会員とする団体)
2 相談の要旨
(1)X協会は,中小の貨物運送事業者を会員とする団体である。
(2)会員は,燃料油Aの購入価格を,毎月,販売業者との交渉によって決定している。
会員の燃料油Aの購入価格は,販売業者の仕入価格に連動して,毎月,大きく変動している。
(3)会員外の有力な貨物運送事業者と燃料油Aの販売業者の間で妥結した価格は,その翌月に業界紙Yで報じられている。また,燃料油Aの価格は,業界紙Yの紙面上で報じられるもの以外にも複数のものが公表されている。
(4)X協会は,かねて,業界動向に関する情報の提供を求める要望を会員から受けている。
そこで,X協会は,貨物運送事業に関連する行政の動き,社会経済情勢,燃料油Aの価格動向等について,既に公表されている情報を収集し,会員に対し無料のメール・マガジンにより提供することを検討している。燃料油Aの価格動向には業界紙Yの紙面上で既に公表されているものを用いる予定である。
- 本件の概要図
このようなX協会の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1)事業者団体が,政府機関,民間の調査機関等が提供する当該産業に関連した技術動向,経営知識,市場環境,立法・行政の動向,社会経済情勢等についての一般的な情報を収集し,提供することは,独占禁止法上問題とならない(事業者団体ガイドライン第2-9-3〔技術動向,経営知識等に関する情報の収集・提供〕)。
事業者団体が,需要者,構成事業者等に対して過去の価格に関する情報を提供するため,構成事業者から価格に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して,客観的に統計処理し,価格の高低の分布や動向を正しく示し,かつ,個々の構成事業者の価格を明示することなく,概括的に,需要者を含めて提供することは,独占禁止法上問題とならない(事業者間に現在又は将来の価格についての共通の目安を与えるようなことのないものに限る。)(事業者団体ガイドライン第2-9-5〔価格に関する情報の需要者等のための収集・提供〕)。
(2)本件は,X協会が,有力な貨物運送事業者が妥結した燃料油Aの価格についての情報を収集し,会員に対して提供するものであるが,
[1] 燃料油Aの価格は販売業者の仕入価格に連動して毎月大きく変動するものであること
[2] 業界紙Yにおいて報じられる燃料油Aの価格は前月の情報であること
から,会員間に現在又は将来の価格について共通の目安を与えるようなものではない。
また,その他の情報も,X協会が貨物運送事業に関連した行政の動向,社会経済情勢等についての一般的な情報を収集し,提供するものである。
よって,X協会の取組は,独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答の要旨
X協会が,既に公表されている情報を収集し,会員に対しメール・マガジンにより提供することは,独占禁止法上問題となるものではない。