12 協同組合による標準価格等の決定

 建築資材の製造販売業者の協同組合が,組合員が顧客に請求する割増料金の参考となる価格を示すことについて,独占禁止法上問題となると回答した事例

1 相談者

 X協同組合(建築資材の製造販売業者の協同組合)

2 相談の要旨

(1)X協同組合は,Z県に所在する建築資材Aの製造販売業者を組合員とし,独占禁止法第22条各号の要件を備えた組合である。Z県における建築資材Aの販売分野における全組合員のシェアは80パーセントを超えている。

(2)X協同組合は,共同経済事業としての建築資材Aの共同販売事業は行っておらず,組合員は,それぞれに建築資材Aを販売している。

(3)組合員の一部は,建築資材Aの販売に当たり,顧客からの発注数量が,運搬車両の積載能力に比べて著しく少ない場合や,運搬した建築資材Aの一部が使用されずに返送される場合について,割増料金を設定している。
 現在,X協同組合には,これらの割増料金を新たに設定したいと考えている組合員から,参考となる価格を示してほしいという要請が多数寄せられている。

(4)X協同組合は,組合員からの要請に応えるため,各種割増料金の参考となる価格を組合員に示すことを検討している。

  • 本件の概要図

 このようなX協同組合の取組は,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1)小規模の事業者の相互扶助を目的として法律の規定に基づいて設立された協同組合等が,独占禁止法第22条各号の要件を備えている場合に,一定の範囲で行う共同経済事業については,原則として,独占禁止法の適用が除外される。ただし,不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は,この限りではない(独占禁止法第22条)。
 事業者団体が,標準価格,目標価格等価格設定の基準となるものを決定し,これにより市場における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1号の規定に違反する。また,市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,原則として同条第4号又は第5号の規定に違反する(事業者団体ガイドライン第2-1-(1)-3〔標準価格等の決定〕)。

(2)本件は,独占禁止法第22条各号の要件を備えたX協同組合による取組であるが,組合員がそれぞれに行っている建築資材Aの販売について具体的な価格を示すものであり,共同経済事業とは認められず,独占禁止法の適用を受ける。

(3)本件は,X協同組合が,組合員に対し,建築資材Aの販売に係る割増料金について,参考となる価格を示すものであるが,これは,組合員の価格設定の基準を決定するものであり,独占禁止法上問題となる。

4 回答の要旨

 X協同組合が,組合員が顧客に請求する割増料金の参考となる価格を示すことは,独占禁止法上問題となる。

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