旅客輸送事業者2社が,同一運賃の共通回数券を導入することについて,独占禁止法上問題となると回答した事例
1 相談者
X社及びY社(旅客輸送事業者)
2 相談の要旨
(1)X社及びY社(以下「2社」という。)は,A県のα地点とB県のβ地点の区間(以下「本件区間」という。)において,それぞれ旅客輸送事業を行っている。
本件区間は,利用者数が多く,2社にとって他の区間よりも利益が見込める重要な区間である。
本件区間における2社の運行便は,いずれも1日30便であり,一定の間隔で交互に出発するよう運行されている。運賃は,2社がそれぞれ独自に設定している。
(2)今般,旅客輸送事業者P社が,本件区間において,2社よりも安価な運賃を設定し,1日15便の運行を新たに開始した。
これにより,本件区間における全運行本数に占める2社の運行本数の割合は合計で8割となり,2社の運行便の利用者数は減少傾向にある。
(3)そこで2社は,利用者の利便性を向上させることによりP社との差別化を図るため,2社の運行便をいずれも利用できる共通回数券を導入し,その際,共通回数券を利用した場合の運賃を同一に設定することを検討している。
- 本件の概要図
このような2社の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1)事業者が,契約,協定その他何らの名義をもってするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することは,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し,独占禁止法上問題となる(同法第3条)。
(2)本件区間において合算で8割の運行本数を占める2社が,両者の運行便をいずれも利用できる同一運賃の共通回数券を導入することは,2社が共同して対価を決定することにほかならず,本件区間における旅客輸送事業の取引分野における競争を実質的に制限するものであり,独占禁止法上問題となる。
4 回答の要旨
2社が,同一運賃の共通回数券を導入することは,独占禁止法上問題となる。