交通インフラ施設の管理運営会社が,テナントとして出店している小売業者に対し,消耗品の販売価格の設定根拠について説明を求めること及び値下げの検討を要請することについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X社(交通インフラ施設の管理運営会社)
2 相談の要旨
(1)X社は,交通インフラを所有するA社の子会社であり,当該交通インフラの利用者に商品又は役務を提供する施設(交通インフラ施設)の管理運営事業を行っている。
(2)X社が管理運営する交通インフラ施設は複数あるところ,各交通インフラ施設のテナントとして,交通インフラを利用するに当たって必需品である消耗品αを販売する小売業者(以下単に「小売業者」という。)がそれぞれ1社出店している。小売業者は,消耗品αをX社以外の事業者から購入しており,X社は消耗品αを販売していない。
(3)交通インフラの利用者が,当該交通インフラの利用中に消耗品αが必要となった場合,消耗品αを当該交通インフラ施設の小売業者から購入することが一般的なため,各小売業者は,交通インフラ施設における消耗品αの販売市場において競争関係にある。
他方,交通インフラの利用者が,当該交通インフラの利用中に消耗品αが必要となった場合,一旦当該交通インフラの外に出て,消耗品αを購入することは費用面及び時間面で現実的ではないため,当該交通インフラ施設の小売業者と当該交通インフラ施設外の小売業者は,消耗品αの販売市場の同一市場において競争関係にあるとはいえない。
(4)X社が管理運営する各交通インフラ施設における小売業者の消耗品αの販売価格は,各小売業者がそれぞれ自主的に決定しているが,交通インフラ施設の小売業者間の競争が不十分であり,当該交通インフラ施設外の小売業者からの競争圧力が大きくないため,当該販売価格は調査機関が公表している全国平均価格よりも著しく高い傾向にあり,利用者からは,X社に対して,各交通インフラ施設における小売業者の消耗品αの販売価格が高いとの苦情が寄せられている。
(5)そこで,X社は,小売業者間の価格競争を促進し,利用者の利便性を向上させることを目的として,管理運営する各交通インフラ施設における小売業者に対し,販売価格の設定根拠について説明を求めた上で,消耗品αの小売価格について値下げの検討を求めることを考えている。
なお,小売業者が当該要請に従わない場合の経済上の不利益は特に存在しない。
このようなX社の取組(以下「本件取組」という。)は,独占禁止法上問題ないか。
- 本件の概要図
3 独占禁止法上の考え方
(1)相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件を付けて,当該相手方と取引することは,不公正な取引方法(一般指定第12項〔拘束条件付取引〕)に該当し,独占禁止法上問題となる(同法第19条)。
(2)本件取組は,利用者からX社に対して交通インフラ施設における消耗品αの販売価格が高いとの苦情が寄せられている中で,X社が管理している交通インフラ施設の小売業者間の価格競争を促進し,利用者の利便性を向上させることを目的とするものであるところ,
① X社からの要請に従わないことの経済上の不利益は特段なく,小売業者は引き続き自己の販売価格を自主的に決定できること
② 消耗品αの小売業者に対して価格設定の根拠について説明を求めるにとどまり,値下げの検討の要請に当たって指標となる具体的な価格を示すものではないこと
から,小売業者の事業活動を不当に拘束するものではなく,独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答の要旨
X社が,テナントとして出店している小売業者に対し,消耗品αの販売価格の設定根拠について説明を求めること及び値下げの検討を要請することは,独占禁止法上問題となるものではない。