住宅設備機器メーカーが,取扱店においてユーザーに販売されている自社の住宅設備機器の販売価格を調査し,調査結果を取りまとめて参考価格帯として自社のウェブサイトにおいて公表することについて,取扱店による自由な販売価格の設定を担保する措置を前提として,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X社(住宅設備機器メーカー)
2 相談の要旨
(1)X社は,住宅設備機器A(以下「機器A」という。)のメーカーである。
(2)X社は,取引先工事業者(以下「取扱店」という。)に機器Aを販売し,取扱店がユーザーに機器Aを販売しているところ,取扱店はユーザーに機器Aを販売する際に,機器Aの設置工事を行うことが一般的である。
(3)機器Aの販売価格及びその設置工事費用(以下「工事費」という。)については,各取扱店が独自に設定しており,一様ではない。このため,X社は,機器Aの工事費込みの販売価格帯をユーザーに示すことにより,ユーザーに安心感を与え,機器Aの需要を喚起したいと考えている。
(4)そこで,X社は,全国の取扱店における機器Aの工事費込みの販売価格(過去の実勢価格)を調査した上,調査結果を取りまとめて,その最高価格及び最低価格(異常値を除いたもの)を参考価格帯として自社のウェブサイトにおいて公表すること(以下「本件取組」という。)を検討している。
X社は,本件取組を実施するに当たって,取扱店の自由な価格設定を担保するため,以下の措置を講じることとしている。
ア 価格調査の際,取扱店に対し,本件取組が今後の取扱店における自由な価格設定を妨げるものではないことを伝える。
イ 調査の具体的作業を外部委託するとともに,X社は外部委託した業者から個々の取扱店の回答の有無や内容が分かる情報の提供を受けない。
ウ 自社のウェブサイトにおいて参考価格帯を公表する際,参考価格帯が取扱店の自由な価格決定を妨げるものではないことを明示する。
このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。
- 本件の概要図
3 独占禁止法上の考え方
(1)事業者が設定する希望小売価格や建値は,流通業者に対し単なる参考として示されているものである限りは,それ自体は問題となるものではない。しかし,参考価格として単に通知するだけにとどまらず,その価格を守らせるなど,事業者が流通業者の販売価格を拘束する場合には,原則として違法となる。(流通・取引慣行ガイドライン第1部第1-1(2))
事業者が単に自社の商品を取り扱う流通業者の実際の販売価格,販売先等の調査(流通調査)を行うことは,当該事業者の示した価格で販売しない場合に当該流通業者に対して出荷停止等の経済上の不利益を課す,又は課す旨を通知・示唆する等の流通業者の販売価格に関する制限を伴うものでない限り,通常,問題とはならない。(流通・取引慣行ガイドライン第1部第1-3)
(2)本件取組は,X社が,自社の機器Aの取扱店における実際の販売価格の調査を行い,調査結果を取りまとめて参考価格帯として公表するものであるところ,X社が取扱店の自由な価格設定を担保する措置を講じることを前提とすれば,取扱店の販売価格に関する制限を伴うものではないため,独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答の要旨
X社が,機器Aについて,取扱店における工事費込みの販売価格を調査し,調査結果を取りまとめて参考価格帯として自社のウェブサイトにおいて公表することは,X社による取扱店の自由な価格設定を担保する措置を前提とすれば,独占禁止法上問題となるものではない。