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8 競合する家電製品メーカーによる配送の共同化のための情報共有

8 競合する家電製品メーカーによる配送の共同化のための情報共有

 家電製品メーカー6社が,将来における物流業務の共同化の実現性及びそのスキームを検討するために各社の物流業務に係る情報を共有することについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 家電製品メーカー6社(以下「6社」という。)

2 相談の要旨

(1)6社のうち2社は,いずれも家電製品Aのメーカーであり,我が国の家電製品Aの製造販売市場における市場シェアは,2社合計で約20パーセントである。
 6社のうち3社は,いずれも家電製品Bのメーカーであり,我が国の家電製品Bの製造販売市場における市場シェアは,3社合計で約50パーセントである。
 6社のうち1社は,家電製品Cのメーカーであり,我が国の家電製品Cの製造販売市場における市場シェアは約70パーセントである。

(2)6社は,それぞれ家電製品を全国の在庫拠点から販売先の全国の卸売業者や小売業者等に配送しており,当該拠点における家電製品の荷役,保管及び当該拠点からの配送の業務を倉庫業者,運送業者等の物流業者に委託している。6社がそれぞれ製造販売する家電製品の販売価格に占める物流経費の割合は,各社いずれも約5パーセントである。

(3)物流分野では,トラックドライバー,倉庫労働者等の人材不足による将来的な配送力の低下が懸念されており,家電製品に係る物流業務の効率化を図ることが,6社共通の課題となっている。

(4)そこで,家電製品の流通経路がおおむね共通する6社は,将来における物流業務の共同化の実現性及びそのスキームを検討するため,以下の情報を共有したいとしている。ただし,共同配送の可否等の検討は限られた部門・人員で行い,検討に必要な情報は当該部門・人員内のみで共有するよう適切な情報遮断措置を講じる。
 ① 各在庫拠点の納品先の名称及び納入条件,配送業者の名称及び契約条件
 ② 各在庫拠点において保管・配送する家電製品の容積
 ③ 各在庫拠点における家電製品の大きさ(大・中・小)ごとの荷役,保管及び配送の原価
 ④ 家電製品の引渡し方法,納品伝票の様式等
なお,①~④のいずれにおいても,家電製品の価格又は数量に関する情報は共有しない。
 このような6社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

  • 本件の概要図

平成29年度相談事例集事例8概要図

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者が,契約,協定その他何らの名義をもってするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することは,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し,独占禁止法上問題となる(同法第3条)。

(2)本件は,我が国の家電製品Aのメーカーである2社,家電製品Bのメーカーである3社及び家電製品Cのメーカーである1社の6社が,将来における物流業務の共同化の実現性及びそのスキームを検討するために各社の物流業務に係る情報を共有するものであるところ,
 ① 家電製品A,B及びCの製造販売市場における相談者の合算市場シェアは約20パーセントから約70パーセントにまでに及ぶものの,6社がそれぞれ製造販売する家電製品の販売価格に占める各社の物流経費の割合(共同化割合)はいずれも約5パーセントと小さいことから,家電製品それぞれ(A,B又はC)の製造販売分野における競争を実質的に制限するものではないこと
 ② 家電製品の価格又は数量に関する情報は共有しないこと
 ③ 共同配送の可否等の検討は限られた部門・人員で行われ,検討に必要な情報は当該部門・人員内のみで共有されるよう適切な情報遮断措置が講じられること
から,独占禁止法上問題となるものではない。
 

4 回答の要旨

 家電製品メーカー6社が,将来における物流業務の共同化の実現性及びそのスキームを検討するために各社の物流業務に係る情報を共有することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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