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10 競合する建設資材メーカーからの製品及び半製品の供給

10 競合する建設資材メーカーからの製品及び半製品の供給

 建設資材メーカーが,競争者に対して,建設資材そのもの及び建設資材の半製品を供給することについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X社及びY社(建設資材メーカー)

2 相談の要旨

(1)X社及びY社(以下「2社」という。)は,建設資材A及び建設資材Bのメーカーであり,X社は日本全国,Y社は日本の一部の地域において事業を行っている。

(2)建設資材Aは半製品αを原材料として製造され,建設資材Bは建設資材Aに成分βを添加することにより製造される。2社はそれぞれ,自社で半製品αを製造している。

(3)建設資材A及び建設資材Bは,輸送コストが大きいため,建設資材A及び建設資材Bのメーカー各社は地域ブロックごとに営業・物流体制を構築しており,2社は甲ブロックにおいて競争関係にある。

(4)甲ブロックにおける競争の状況は以下のとおりとなっている。
 ア 建設資材Aの製造販売市場においては,X社の市場シェアが約45パーセント(第1位),Y社の市場シェアが約5パーセント(第5位)である。また,2社以外の主な競争者として,それぞれ市場シェア約20パーセント(第2位)を有するP社及びQ社が存在する。
 イ 建設資材Bの製造販売市場においては,X社の市場シェアが約35パーセント(第1位),Y社の市場シェアが約5パーセント(第4位)である。また,2社以外の主な競争者として,市場シェア約30パーセント(第2位)を有するP社,市場シェア約20パーセント(第3位)を有するQ社が存在する。

(5)Y社は,半製品αの製造設備が老朽化しているところ,採算性の向上等の観点から当該製造設備を更新するのではなく,半製品αの製造を取りやめ,以下の取組(以下「本件取組」という。)を行うことを検討している。
 ア X社から供給を受けた建設資材AをY社のブランドで販売する。
 イ X社から供給を受けた半製品αを用いて建設資材A及び建設資材Bを製造し,Y社のブランドで販売する。
 ウ 2社は,それぞれ独自に建設資材A及び建設資材Bを販売し,互いに販売価格,販売数量,販売先等には一切関与しない。
なお,本件取組により,Y社の製造コストに占めるX社からの調達の割合は,建設資材Aが約90パーセント,建設資材Bが約50パーセントとなる。
 このような2社の取組は,独占禁止法上問題ないか。

  • 本件の概要図

平成29年度相談事例集事例10概要図

3 独占禁止法上の考え方

(1)事業者が,契約,協定その他何らの名義をもってするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することは,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し,独占禁止法上問題となる(同法第3条)。

(2)本件取組は,X社が競争者であるY社に対して建設資材A及び半製品αを供給するものであるところ,甲ブロックにおける2社の合算市場シェアは,建設資材Aの製造販売市場において約50パーセント,建設資材Bの製造販売市場において約40パーセントであり,本件取組により,Y社の製造コストに占めるX社からの調達の割合は,建設資材Aが約90パーセント,建設資材Bが約50パーセントとなるが,
 ① 2社は,本件取組後においても,建設資材A及び建設資材Bの販売自体はそれぞれ独立して行い,互いに販売価格,販売数量,販売先等には一切関与しないこと
 ② 建設資材Aの製造販売市場については,有力な競争者が複数存在すること
 ③ 建設資材Bの製造販売市場については,本件取組後のY社の製造コストに占めるX社からの調達の割合は約50パーセントとなり2社間において一定の価格競争の余地があることに加え,有力な競争者が複数存在すること
から,甲ブロックにおける建設資材A及び建設資材Bの各製造販売分野における競争を実質的に制限するものではなく,独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 X社が,Y社に対して,建設資材A及び半製品αを供給することは,独占禁止法上問題となるものではない。

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