1 相談者
工作油剤製造業者の団体(平成8年度)
2 相談の要旨
(1) 会員の製造する工作油剤は,工作機械で鉄などを削るときに,切削刃物と鉄材との接触面に生じる摩擦による加熱等を防ぐために使用される油剤で,潤滑及び冷却材としての役割を果たすものである。
主なユーザーは,自動車及び関連部品メーカーである。
(2) 工作油剤は,そのままで使用されることはなく,使用する時に溶剤を9割以上混ぜて使用される。また,何回も循環して継続使用されるため,使用期間等によっては工作油剤が腐敗し,工作機械に悪影響を与えることがある。
このため,ほとんどの会員は,無料で定期的にユーザーの工作油剤の検査を行っている。
しかし,この検査は,検査のための定期巡回など会員の一方的な負担により行われているものであり,会員から強い不満が出ている。
(3) そこで,当団体として,今後,会員が工作油剤の検査を行う場合は,別途検査に要する料金を申し受けることとし,この旨をユーザーに対し新聞広告等で告知したいと考えているが,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 事業者団体が,構成事業者が供給し,若しくは供給を受ける商品若しくは役務の価格を決定し,又はその維持若しくは引上げを決定し,これにより市場における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反する。また,市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,原則として独占禁止法第8条第1項第4号の規定に違反する。
ここで「価格」とは,料金,手数料,金利等その名称や形態のいかんを問わず商品又は役務の対価であるものを指しており,割戻し,値引き等実質的に価格の構成要素となるものを含む。
[団体ガイドライン1-1(価格等の決定),1-(3)(価格制限行為における「価格」)]
(2) 工作油剤の検査費用は,価格の構成要素の一部になり得るものであり,その費用負担については,個々の会員の自主的な判断に委ねられるべきものである。
したがって,団体において,会員の行う工作油剤の検査を有料化することを決定することは,独占禁止法上問題となる。
4 回答の要旨
団体が,会員の行う工作油剤の検査を有料化することを決定することは,独占禁止法上問題となる。