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3 配達先変更に伴う費用負担についての取引先への改善要請[団体ガイドライン1-1,1-(3)]

3 配達先変更に伴う費用負担についての取引先への改善要請[団体ガイドライン1-1,1-(3)]

1 相談者

 電子部品材料会社の団体(平成10年度)

2 相談の要旨

(1) 会員の製造する電子部品のユーザーは,電子機器メーカーであり,いずれも大企業である。当該電子部品は,各種電子機器に幅広く使用されているものの,ユーザーである電子機器メーカーの生産拠点の海外移転や景気の低迷が重なり,国内需要は減少傾向にある。

(2) 会員のユーザーである電子機器メーカーへの納品に当たっては,電子機器メーカーの指定する工場に納品するのが通常であり,発注単価は,指定された工場までの納品に要する運送費用を含めて設定されている。
 しかし,電子機器メーカーの都合により別の工場へ納品するよう指示されることも度々あり,そのような場合には,当初指定された工場までの運送費用では経費が足りなくなり,運送費用の増加分を会員が負担している状況にある。

(3) そこで,取引先の指示により当初の配達先から別の配達先に変更された場合でも,当初の契約時の運送費用が適用され,会員が運送費用の増加分を負担している現状について,団体として,会員の窮状をユーザーである電子機器メーカーに訴えることを考えている。
 団体としてこのような業界の窮状を訴える文書を電子機器メーカーに発出することは,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 事業者団体が,構成事業者が供給し,若しくは供給を受ける商品若しくは役務の価格を決定し,又はその維持若しくは引上げを決定し,これにより市場における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反する。また,市場における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,原則として独占禁止法第8条第1項第4号の規定に違反する。
 ここで「価格」とは,料金,手数料,金利等その名称や形態のいかんを問わず商品又は役務の対価であるものを指しており,割戻し,値引等実質的に価格の構成要素となるものを含む。
 [団体ガイドライン1-1(価格等の決定),1-(3)(価格制限行為における「価格」)]

(2)
ア 配送費用は,価格の構成要素となり得るものであることから,団体として,取引先の指示により当初の配達先が変更になった際の運送費用の追加徴収を決定することは,独占禁止法上問題となる。
 一方,団体として,業界の窮状や現状を訴え,具体的な取引条件自体の内容に関与せず,取引先に対して一般的な取引条件の改善へのお願いを行うことは,独占禁止法上問題ない。

イ 相談の場合においては,業界の窮状を訴え,改善を求めるものであって,取引条件自体の内容に関与するものではなく,会員に対して団体で定めた取引条件の遵守を強制するものではないことから,独占禁止法上問題ない。

4 回答の要旨

 団体が,会員の窮状を訴える文書を作成し,ユーザーである電子機器メーカーに発出することは,独占禁止法上問題ない。

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