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5 共同研究開発に伴う購入先制限

5 共同研究開発に伴う購入先制限

 建築資材メーカーとその製品のユーザーである建設業者の2社が,建築工法について共同で開発し,建設業者が当該工法において使用する資材については,当該建築資材メーカーのみが供給するよう取り決めることは,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 A社(建設業者)

2 相談の要旨

(1) A社は業界第12位の総合建設業者,B社は建築資材Xの市場において約10%のシェアを有する建築資材メーカーである。A社及びB社は,ビル建設のための新たな工法について共同で開発し,当該工法について共同で特許を出願している。

(2) 上記の共同研究開発については,A社に当該工法において使用する建築資材Xについての製造能力はなく,全量をB社から供給されることを前提に進められてきたところ,両社は,当該研究開発の成果を踏まえ,以下の契約を締結することを検討しているが,独占禁止法上問題ないか。

ア 本件工法で使用される建築資材Xについては,B社が全量を生産し,A社に供給するものとする。

イ B社は,両社からライセンスを受けて当該工法を実施しようとする建設業者に対し,建築資材Xを販売することができるが,その際の販売価格は,A社への供給価格を下回らないものとする。

ウ 本件契約期間は5年とするが,当該工法に係る特許が取得された場合には,当該特許が有効な期間(出願日から20年間)は,原則として自動更新する。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 共同研究開発の成果に基づく製品の原材料又は部品の購入先を制限することは,不公正な取引方法に該当するおそれがある。[共同研究開発ガイドライン 第2-2(3)イ[4]]

(2) しかしながら,本件については,

ア 当事者であるA社及びB社は,原材料メーカーとそのユーザーという関係であり直接の競争関係にはないところ,競争関係にない事業者間の共同研究開発については,通常,独占禁止法上の問題を生じるおそれは小さい。
また,このような事業者間の共同研究開発であれば,その成果を実施する場合の原材料等の供給者は当該参加事業者とすることが当然の前提とも考えられる。

イ B社が建築資材Xを全量生産し,A社に他社より有利な条件で供給することを義務付けることは,共同研究開発の成果を両者の間で配分する手段として行われる場合においては,制限が合理的な期間にとどまる限り不当性を有するものではない。

ウ A社は,当該工法以外の工法においてはB社以外の事業者から建築資材Xを購入することが制限されるものではなく,B社も,当該工法のライセンス先事業者に対して建築資材Xを販売することは認められ,また当該工法向けの販売以外には何ら制約を課されていないことから,これによって競争事業者の取引先が減少し,事業活動が困難になるとは認められない。

(3) したがって,本件共同研究開発に伴う制限ついては,制限が課される期間が研究開発の成果を当事者間で配分するために合理的に必要な範囲にとどまる限りは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。この点,当該工法に係る特許の存続期間にわたり自動的に更新されるとの取決めは,当該合理的に必要な範囲を逸脱するおそれもあることから,契約更新時には制限の内容を再検討する必要がある。

4 回答の要旨

 本件取決めについては,契約期間が5年にとどまる限りは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。しかしながら,その後も特許の存続期間は原則として自動更新されるとすることは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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