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6 食品メーカーによる共同配送会社の設立

6 食品メーカーによる共同配送会社の設立

 納入先スーパーからの要望に基づいて,食品メーカーが子会社を設立して自社の競争事業者と共同配送を行うことは,独占禁止法上問題ないと回答した事例。

1 相談者

 A社(食品メーカー)

2 相談の要旨

(1) A社は,食品メーカーで,甲食品については有力なメーカーである。

(2) 大規模小売店舗立地法が施行されたことにより,スーパーとしては,駐車場の確保,納入車両の削減,夜間納入の禁止等地域住民からの要望に応えていくことがこれまで以上に重要な課題となっている。こうした状況を踏まえ,全国的に店舗を展開している有力なスーパーであるB社は,自社で配送する能力を有し,かつ甲食品の取引量の多いA社に対して,B社への納入に当たって,他の甲食品メーカーと共同配送するように要望している。
 なお,B社向け甲食品におけるシェアは,1位がA社で5割強,2位メーカーが1割強,残りのメーカーはいずれも1割以下となっている。

(3) そこで,A社は,B社の要望に応えるため,他の甲食品メーカーとも相談して共同配送を実施することとし,A社の100%出資子会社である共配センターを新たに設立することとした。
 具体的な共同配送の流れは,
ア 甲食品メーカーは,従来どおりB社と直接受発注を行う。
イ 甲食品メーカーは,商品と専用伝票をケースに入れ,各社独自に共配センターの指定された場所まで運搬し,共配センターはこれを取りまとめてB社の各店舗に納入する。
ウ 甲食品メーカーは,B社の各納入先店舗別のケース数(ケースは,各社のものを使用)を出荷する直前に共配センターへ連絡する。
というものである。
 なお,共配センターの従業員は,B社の各店舗の店頭での陳列作業を一切行わない。また,A社は,物流コストを軽減するためにできるだけ多くの甲食品メーカーに参加を要請することとしている。

(4) さらに,A社は,共配センターを通じて自社に他の甲食品メーカーの情報が漏洩すること及びA社を含む甲食品メーカー間において競争手段に係る情報が共有されることをそれぞれ防止する観点から次のような対策を考えている。
ア A社の役員は,共配センターの役員を兼務せず,A社の従業員も共配センターへ出向させない。
イ A社を含む各食品メーカーと共配センターの間において,取引に関する情報(価格,数量等)を漏洩し,又は交換しない旨の条項を含む契約を締結する。
ウ B社と各食品メーカーとの取引に係る専用伝票は,専用ケース(外から見えない)に入れ,共配センターと各食品メーカーとの取引に係る伝票には,価格,数量等には触れず授受に必要なケースの個数のみを記載して,取引に関する情報を共配センターの従業員が知り得ないようにする。
 以上のような共同配送を行うことは,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

 B社向けの甲食品において非常に有力なA社が100%出資の共配センターを設立して,競争事業者である他の甲食品メーカーと共同配送を行おうとするものであることから,本件は,私的独占及び不当な取引制限の観点から検討する。

(1)
ア 事業者が,単独で,又は他の事業者と共同して,他の事業者の事業活動を排除し,又は支配することにより,一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には,私的独占に該当し,違法となる。[独占禁止法第3条(私的独占)]
イ 相談の場合においては,(1)特に制限を設けることなく,できるだけ多くの甲食品メーカーに参加を要請するとしていること,(2)A社と共配センターとの間では,兼務,出向等の人的な交流が制限されており,また共配センターと他の甲食品メーカーの取引に関する情報が交換されることもない。したがって,共配センターの運営については中立性が確保されることから,共同配送の仕組み自体は,直ちに独占禁止法上問題ないと考えられる。
 ただし,A社はB社向け甲食品において5割強のシェアを有するところ,他の甲食品メーカーが共配センターを利用しなければB社との取引が困難という状況において,A社があるいはA社と他の甲食品メーカーが共同して,他の甲食品メーカーの共配センターの利用を不当に制限することは,独占禁止法上問題となる。

(2)
ア 事業者が,他の事業者と共同して,製品の価格,数量等競争手段を相互に制限することにより,一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には,不当な取引制限に該当し,違法となる。[独占禁止法第3条(不当な取引制限)]
イ A社が他の甲食品メーカーと共同配送を実施することは,B社への納入の効率化を目的とするものであり,共同配送自体がB社向けの甲食品の販売競争に及ぼす影響は少なく,独占禁止法上問題となるものではないと考えられる。ただし,共同配送を通じて商品の価格,数量等の重要な競争手段について情報交換が行われる場合には,一定の取引分野における競争を実質的に制限し,独占禁止法上問題となるおそれがある。
ウ 相談の場合においては,(1)共配センターはA社及び各甲食品メーカーとの契約において,取引に関する情報(価格,数量等)について守秘義務を定めるとしていること,(2)共配センターの従業員は取引に関する情報を取得できないシステムとするなどの対策を施した上,B社と各甲食品メーカーとは直接受発注を行い,共配センターは商品の運搬のみを行うとしていることから,共同配送を通じて各食品メーカーが価格等について情報交換を行うおそれは小さく,独占禁止法上問題ないと考えられる。

4 回答の要旨

 A社が,B社への納入に当たって,子会社である共配センターを設立し,他の甲食品メーカーと共同配送を行うことは,独占禁止法上問題ない。ただし,甲食品メーカーが共配センターを利用しなければB社との取引ができないという状況において,A社があるいはA社と他の甲食品メーカーが共同して,競争事業者である甲食品メーカーの共配センターの利用を不当に制限する場合には,独占禁止法上問題となる。

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