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12 レジ袋の有料化に伴う事業者団体による単価統一等の取組

12 レジ袋の有料化に伴う事業者団体による単価統一等の取組

 特定の業態の小売業者を会員とする団体が,レジ袋有料化の義務付けに伴い,会員の店舗において提供されるレジ袋について,従来のレジ袋は今後提供しないこととし,環境負荷の小さいレジ袋を単価3円で提供することを内容とするガイドラインを策定することについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例 

1 相談者

 Ⅹ協会(特定の業態の小売業者〔以下「特定小売業者」という。〕を会員とする団体)

2 相談の要旨

(1)Ⅹ協会は,特定小売業者を会員とする団体である。我が国における特定小売業者のほとんどは,Ⅹ協会の会員となっている。

(2)かねてから,Ⅹ協会の会員である特定小売業者は,店舗で商品を購入した一般消費者に対して,レジ袋を無償で提供してきた。

(3)令和元年5月に政府が制定した「プラスチック資源循環戦略」ではプラスチック製容器包装・製品に係るリデュース(削減)等の徹底が重点戦略の一つとして位置付けられている。その取組の一環として,令和2年7月から,小売業者が提供するレジ袋について,原則として有料化が義務付けられることとなった。環境負荷の小さい一定のレジ袋は有料化の義務付けの対象外とされているが,当該レジ袋についても,政府のガイドラインにおいて,リデュース等の徹底という観点から,環境性能に応じた適正な対価が支払われることが期待されている。

(4)Ⅹ協会は,このような状況を踏まえ,また,自らが一般消費者に対して実施したレジ袋に関する意識調査の結果も勘案して,会員の店舗において提供されるレジ袋について
 ア 有料化義務付けの対象となるレジ袋の提供を取りやめる一方で,環境負荷が小さく,有料化義務付けの対象外である特定の種類のレジ袋(以下「特定レジ袋」という。)を有料で提供することとする
 イ 特定レジ袋の価格は,単価3円とする
ことを内容とするガイドライン(以下「本件ガイドライン」という。)を策定することを検討している。本件ガイドラインを遵守するか否かは,会員の自由である。
 このようなX協会の取組(以下「本件取組」という。)は,独占禁止法上問題となるか。

  • 本件取組の概要図

令和元年度相談事例集事例12概要図

3 独占禁止法上の考え方

(1)独占禁止法第8条第1号関係
  ア 事業者団体が,構成事業者が供給し,若しくは供給を受ける商品若しくは役務の価格を決定し,又はその維持若しくは引上げを決定し,これにより一定の取引分野における競争を実質的に制限することは,独占禁止法第8条第1号の規定に違反する(事業者団体ガイドライン第2-1-1〔価格等の決定〕)。
  イ(ア) 特定小売業者の顧客である一般消費者にとって,店舗において提供されるレジ袋は,購入した商品を持ち帰るために使用するものである。一般消費者がレジ袋の提供を受けること自体を目的として入店することは考えにくく,その点に関しては,レジ袋の有料化義務付けが実施された後においても同様であると考えられる。特定小売業者の競争手段は,店舗における商品の提供であり,レジ袋の提供は,商品の提供に付随する副次的なサービスの一つにすぎない。
      このため,本件の一定の取引分野については,レジ袋の取引ではなく,我が国における特定小売業者の業種に係る小売業(当該小売業における商品の販売分野)と画定した。
   (イ) X協会の会員は,店舗で販売する商品の価格,品質,品揃え等について競争を行っている。本件取組は会員が販売するレジ袋の種類及び単価を決定するものであるところ,本件取組が実施されても,副次的なサービスであるレジ袋の提供の方法が制限されるだけであり,会員間における商品に関するこれらの競争を制限することにはならない。また,本件取組は,政府が進めるプラスチック資源循環戦略の趣旨を踏まえた正当な目的に基づくものであり,取組の内容も当該目的に照らして合理的に必要とされる範囲内のものである。
  ウ したがって,本件取組は,一定の取引分野における競争を実質的に制限するものではなく,独占禁止法上問題となるものではない。

(2)独占禁止法第8条第4号関係
  ア(ア) 事業者団体が,構成事業者が供給し,若しくは供給を受ける商品若しくは役務の価格を決定し,又はその維持若しくは引上げを決定する行為は,一定の取引分野における競争を実質的に制限するまでには至らない場合であっても,構成事業者の機能又は活動を不当に制限するものとして,原則として独占禁止法第8条第4号の規定に違反する。
     もっとも,本件取組については,資源・環境に係る課題への対応という社会公共的な目的に基づく自主規制という側面があるため,後記(イ)の事業者団体ガイドラインの考え方を踏まえて,独占禁止法第8条第4号に違反することとなるか否かについて検討を行う。
   (イ) 自主規制等に関して,その競争阻害性の有無については
・ 競争手段を制限し需要者の利益を不当に害するものではないか
及び
・ 事業者間で不当に差別的なものではないか
の判断基準に照らし
・ 社会公共的な目的等正当な目的に基づいて合理的に必要とされる範囲内のものか
の要素を勘案しつつ,判断される。
      また,自主規制等の利用・遵守については,構成事業者の任意の判断に委ねられるべきであって,事業者団体が自主規制等の利用・遵守を構成事業者に強制することは,一般的には独占禁止法上問題となるおそれがある(事業者団体ガイドライン第2-8⑵〔自主規制等〕)。
  イ 本件取組は
   (ア) レジ袋に係るリデュース等の徹底という政府の方針を踏まえた正当な目的に基づくものであること
   (イ) 環境への影響に鑑みると,環境負荷が小さい特定レジ袋への切替えを進めることが望ましいこと
   (ウ) 特定レジ袋については,有料化の義務付けの対象にはなっていないものの,政府のガイドラインにおいて環境性能に応じた適正な対価が支払われることが期待されており,会員間の価格競争によってレジ袋削減という目的の達成を妨げるような安価での提供に陥らないようにする必要があるため,X協会による意識調査に基づく一般消費者の認識等を踏まえて,価格に関する具体的な基準を示すことが適当であること
等から,正当な目的に照らして合理的に必要とされる範囲内のものと認められる。
  ウ 本件取組により,需要者である一般消費者は,従来無料で提供されていたレジ袋について単価3円を支払うこととなるが,本件取組が正当な目的に照らして合理的に必要とされる範囲内のものであることを踏まえると,本件取組によって需要者の利益を不当に害するとはいえないと考えられる。
  エ 本件ガイドラインの内容は,会員間で差別的なものではない。
  オ 本件取組は,会員に対して本件ガイドラインの遵守を強制するものではない。
  カ 以上によれば,本件取組は,X協会の会員の機能又は活動を不当に制限するものではなく,独占禁止法上問題となるものではない。
    なお,前記アの判断基準に照らし本件取組が競争を阻害することがないようにするとの観点から,本件取組を行うに際しては,Ⅹ協会において,会員からの意見聴取の十分な機会が設定されるべきであるとともに,必要に応じ,商品の需要者である一般消費者や知見のある第三者等との間で意見交換や意見聴取が行われることが望ましい。

4 回答

 本件取組は,独占禁止法上問題となるものではない。
 なお,本件取組を行うに際しては,会員からの意見聴取の十分な機会が設定されるべきであるとともに,必要に応じ,商品の需要者である一般消費者や知見のある第三者等との間で意見交換や意見聴取が行われることが望ましい。

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