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10 事業者団体による会員の供給製品に係る産業廃棄物の運搬料に関する実態調査の実施

10 事業者団体による会員の供給製品に係る産業廃棄物の運搬料に関する実態調査の実施

 業務用設備メーカーを会員とする団体が,公的機関から委託を受け,当該公的機関による公表を前提に,会員が供給した製品の利用の終了に伴って発生する産業廃棄物の運搬料に係る実態調査を実施することについて,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例

1 相談者

 X協会(業務用設備メーカーを会員とする団体) 

2 相談の要旨

⑴X協会は,業務用設備である甲製品のメーカーの団体である。
 甲製品の主なメーカーは,X協会の会員となっている。
 なお,X協会の会員は,甲製品のユーザー(以下「特定ユーザー」という。)に対し,甲製品を直接販売している。
 
⑵特定ユーザーは,甲製品の利用の終了に伴って発生する廃棄物(以下「特定産業廃棄物」という。)の運搬を,専門の運搬業者(以下「特定運搬業者」という。)に委託している。
 
⑶公的機関Yは,特定産業廃棄物の処理に係る実態把握を目的として,X協会に対し,特定産業廃棄物の収集運搬に関する調査及び報告を委託した。
 公的機関Yは,自らのウェブサイト上において,X協会から報告される調査結果をそのまま掲載し,誰でも閲覧できるようにする予定である。
 
⑷X協会は,公的機関Yから受託した前記⑶の調査の一環として,特定運搬業者に対するアンケート調査(以下「本件調査」という。)を実施し,調査の結果を取りまとめて公的機関Yに報告することを検討している。本件調査の実施及び取りまとめの方法の概要は,次のとおりである。
 ア 本件調査の対象は,X協会が把握している主要な特定運搬業者20数社とする。
   なお,本件調査の対象者は,いずれもX協会の会員ではない。
   本件調査に回答するか否かは,対象者の任意とする。X協会としては,50パーセント以上の回答率を見込んでいる。
 イ 本件調査においては,対象者が特定ユーザーから実際に受託した特定産業廃棄物の運搬の事例2件に関し,運搬量,運搬距離,受託料等について具体的に回答する設問を設ける。
 ウ 前記イの設問に対する回答を公的機関Yに報告するに当たり,X協会は,「何キログラムから何キログラムまで」,あるいは,「何キロメートルから何キロメートルまで」というように,運搬量,運搬距離別に階級を設定し,階級ごとに,特定運搬業者からの受託料に係る回答について,最小値,最大値,中央値及び平均値を記載する。階級ごとの回答数についても併せて記載する。
 このようなX協会の取組(以下「本件取組」という。)は,独占禁止法上問題となるか。
 

〇本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴事業者団体の情報活動を通じて,競争関係にある事業者間において,現在又は将来の事業活動に係る価格等重要な競争手段の具体的な内容に関して,相互間での予測を可能にするような効果を生ぜしめる場合がある。このような観点から見て,重要な競争手段に具体的に関係する内容の情報活動は,それ自体で直ちに違反とまでは評価されないものの,独占禁止法上問題となり得るものである。ここで,「競争関係にある事業者間」における事業者とは,必ずしも事業者団体の会員に限られるものではなく,事業者団体の情報活動が会員以外の事業者間の競争に影響を及ぼす場合も,同様に考えられる。
 事業者団体によるこのような情報活動を通じて,事業者間で,価格,数量,顧客・販路,設備等に関する競争の制限に係る合意が形成され,事業者が共同して市場における競争を実質的に制限する場合には,これら事業者の行為が独占禁止法第3条の規定に違反する(事業者団体ガイドライン第2-9〔情報活動〕⑵及び9-1)。
 一方,事業者団体が,需要者,事業者等に対して過去の価格に関する情報を提供するため,事業者から価格に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して,客観的に統計処理し,価格の高低の分布や動向を正しく示し,かつ,個々の事業者の価格を明示することなく,概括的に,需要者を含めて提供することは,事業者間に現在又は将来の価格についての共通の目安を与えるようなことのないものに限り,独占禁止法上問題とならない(事業者団体ガイドライン第2-9-5〔価格に関する情報の需要者等のための収集・提供〕)。
 
⑵ア(ア) 本件調査は,X協会が把握している主要な特定運搬業者20数社を対象とし,対象者に対し,それぞれ,特定ユーザーから実際に受託した特定産業廃棄物の運搬の事例2件に係る受託料等について回答を求めるものである。つまり,本件調査の場合,特定運搬業者による特定ユーザーからの特定産業廃棄物の運搬に係る受託料(以下「本件受託料」という。)のデータ(以下「特定データ」という。)の総数は,全ての対象者から回答が得られた場合であっても,50件に満たない。
      なお,X協会が見込んでいる回答率は「50パーセント以上」であるので,特定データの総数は,20件強にとどまる可能性もある。
  (イ) X協会は,本件調査の結果を公的機関Yに報告するに当たり,「何キログラムから何キログラムまで」,あるいは,「何キロメートルから何キロメートルまで」というように,運搬量,運搬距離別に階級を設定し,階級ごとに,特定データを基に,最小値,最大値,中央値,平均値及び回答数を記載することとしている。しかし,前記(ア)のとおり,本件調査における特定データの総数は最多でも50件に満たず,場合によっては20件強にとどまることもあり得るため,統計処理を行っても,個々の特定データの内容を推測できるようになる可能性が高い。
  (ウ) 公的機関Yは,自らのウェブサイト上において,X協会から報告される調査結果をそのまま掲載する予定であり,当該調査結果については,特定運搬業者が閲覧することが可能になる。
 イ 前記アの状況の下では,本件調査の結果は,本件受託料について,主要な特定運搬業者の個々の金額が推測可能であって,概括的に提供されるものとはいえず,特定運搬業者に対して,現在又は将来における本件受託料についての共通の目安を与えるおそれがある。
   したがって,本件調査については,独占禁止法上問題となるおそれがある。

4 回答

 本件取組は,独占禁止法上問題となるおそれがある。 

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