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1 報道機関によるニュースポータルサイト事業者に対する共同行為

1 報道機関によるニュースポータルサイト事業者に対する共同行為

 報道機関が、①他の報道機関と共同で、ニュースポータルサイト事業者に対し、当該事業者と締結した記事提供契約が正しく履行されているかを確認するためのデータの開示を要請すること(実際の個社データの開示は報道機関に対し個社ごとに行われる)、②他の報道機関と共同で、無断でニュース記事の見出し等を利用しているニュースポータルサイト事業者に対し、見出し等の提供契約を締結するよう要請すること(実際の契約交渉や契約締結は、報道機関が個社ごとに行う)及び③他の報道機関と共同で、ニュースポータルサイト事業者との間で締結するニュース記事等の提供契約のひな型を作成すること(当該ひな型を実際に使用するかどうかは各報道機関の任意とする)について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例  

1 相談者

 X社(報道機関) 

2 相談の要旨

⑴X社は、ニュース記事の取材、制作、配信等を行う報道機関である。
⑵ア X社は、自社で制作したニュース記事について、紙媒体の新聞として販売しているのをはじめ、インターネット上において自社のニュースサイト(以下「自社サイト」という。)で配信しているほか、ニュースポータルサイトの運営事業を行う事業者(以下「ニュースポータルサイト事業者」という。)と記事提供契約を締結し、ニュース記事を提供して記事提供料収入を得ている。
 イ X社以外の報道機関も、X社と同様に、自社で制作したニュース記事を自社サイトで配信しているほか、ニュースポータルサイト事業者と記事提供契約を締結してニュース記事を提供し、記事提供料収入を得ている。
⑶ア A社及びB社は、X社を含む報道機関からニュース記事の提供を受け、ニュース記事の無料配信を行っているニュースポータルサイト事業者である。
 イ C社及びD社は、ニュース記事の見出し等の無料配信を行っているニュースポータルサイト事業者である。ただし、当該ニュース記事の取材及び編集を行った報道機関に対して無断でニュース記事の見出し等を利用しているものであり、記事提供契約を締結しておらず、記事提供料の支払も行っていない。
⑷ア X社は、A社及びB社の両社から、それぞれ、記事提供契約の規定に基づいて算出された記事提供料の支払を受けているところ、当該両社は、X社に対し、記事提供料の支払に当たって、自社の広告売上の金額、総ページビュー数及びX社が当該両社に提供したニュース記事のページビュー数を開示しているものの、その正確性を検証し得るデータについては、X社が開示を要請しても応じていない。
 イ X社は、C社及びD社に対し、X社のニュース記事の見出し等の使用に係る契約の締結を求めているものの、C社及びD社は、契約の締結を拒否している。
⑸X社は、前記⑷のような状況を踏まえ、次のア、イ及びウの取組(以下「本件取組」という。)を行うことを計画している。
 ア 他の報道機関と共同して、記事提供契約を締結しているニュースポータルサイト事業者に対し、記事提供契約に定められた取引条件が正しく履行されているかどうかを確認するためのデータの開示を要請すること。ただし、実際の個社データの開示はX社等に対し個社ごとに行われる(以下「取組①」という。)。
 イ 他の報道機関と共同して、ニュース記事の見出し等の提供契約を締結せずに見出し等を無断で利用しているニュースポータルサイト事業者に対し、ニュース記事の見出し等の提供契約を締結するよう要請すること。ただし、実際の契約交渉や契約締結は、X社等が個社ごとに行う(以下「取組②」という。)。
 ウ 他の報道機関と共同して、ニュースポータルサイト事業者との間で締結するニュース記事等の提供契約のひな型を作成すること。ただし、当該ひな型を実際に使用するかどうかは各報道機関の任意とする(以下「取組③」という。)。
  本件取組は、独占禁止法上問題となるか。

○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。
⑵ア 取組①は、X社が、他の報道機関と共同で、X社等と記事提供契約を締結しているニュースポータルサイト事業者に対し、記事提供料の正確性を検証し得るデータの開示を要請するというものであり、記事提供料の引上げ等を申し入れるわけではない。また、実際の個社データの開示もX社等に対し個社ごとに行われることとなる。
   そうすると、取組①を契機として、記事提供料の引上げ等について、X社等の間で共通の意思が形成されるなど、競争制限的な行為が行われるとは考え難く、独占禁止法上問題とならないと考えられる。
 イ 取組②は、X社が、他の報道機関と共同で、ニュース記事の見出し等を無断で利用しているニュースポータルサイト事業者に対して見出し等の提供契約の締結を要請するというものであり、共通の取引条件で見出し等の提供契約を締結するよう申し入れるわけではない。また、実際の契約交渉や契約締結は、X社等が個社ごとに行うこととなる。
   そうすると、取組②を契機として、ニュース記事の見出し等の記事提供料の金額等の取引条件について、X社等の間で共通の意思が形成されるなど、競争制限的な行為が行われるとは考え難く、独占禁止法上問題とならないと考えられる。
 ウ 取組③は、X社が、他の報道機関と共同で、ニュースポータルサイト事業者との間で締結するニュース記事等の提供契約のひな型を作成するというものではあるが、ひな型について利用や遵守を強制するものではない。
   したがって、ひな型が取引条件の具体的内容(ニュース記事等の提供料(徴収の有無を含む。)、支払条件、納期等)に関与せず、また、当該ひな型が特定の事業者に対して差別的な内容でない場合には、独占禁止法上問題とならないと考えられる。

4 回答

 本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。 

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