2 窯業製品メーカーの競争者間における相互OEM供給

 窯業製品メーカー2社が、特定の窯業製品に係る相互OEM供給を行うことについて、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例 

1 相談者

 X社及びY社(窯業製品メーカー) 

2 相談の要旨

⑴X社及びY社の2社(以下「2社」という。)は、いずれも、窯業製品A(以下「本件製品」という。)のメーカーである。
⑵ア 本件製品は、我が国においてはJIS規格で定められた品質等の規格を満たしている製品のみが流通しており、製造販売元等により製品の質が大きく変わるものではない。
 イ 2社の本件製品の市場シェアは、X社が約40 パーセント(第1位)、Y社が約20 パーセント(第3位)と推計される。本件製品の販売業者は2社のほかに数社あるが、競争者の製品はほぼ海外生産品と考えられる。
⑶ア 2社は、各社1か所の工場で本件製品の製造を行っており、それぞれの工場には十分な供給余力がある。
 イ 2社は、需要者への本件製品の運送(大口契約を除く。)を、2社のそれぞれの工場から物流拠点を経由して行っている。
 ウ 本件製品について、運送の難易性や運送費用の点からの制約は無く、地域によって販売価格が異なるといった事情もない。
 エ 本件製品の運送費については、原価に占める割合が高く、また、近年、増加傾向にあることから、2社においては、その削減が重要な課題となっている。
⑷そこで、2社は、工場と物流拠点間の運送費を削減する目的で、物流経路等の都合上、相手方の工場から運送する方が運送費を抑制できると考えられる地域の需要者に販売する本件製品の一部(X社の総販売量の約7パーセント、Y社の総販売量の約15 パーセントに相当)について、後記アないしウの内容の相互OEM供給を検討している。
 ア 2社は、本件取組の対象を、国内の5つの地域(以下「5地域」という。)に限定して、各社の製造量の範囲内で、相互に等量の本件製品の製造を委託し、相互に相手方の工場へ製品を受け取りに行き、自社の物流拠点に搬入する方法で相互OEM供給を行う。
 イ 本件製品の製造原価は、製品の性質上2社で大きく異なるものではないと見込まれることから、互いに等価であると評価して、相互OEM供給に係る金銭のやり取りは無い。
 ウ 2社は、それぞれ独自に本件製品を販売し、互いに販売価格、販売数量、販売先等には一切関与しない。
⑸このような2社の取組(以下「本件取組」という。)は、独占禁止法上問題となるか。
 

○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。
⑵ア(ア) 本件製品の品質等はJIS規格により定められており、本件製品以外の製品との需要の代替性が認められないことから、「本件製品 JIS 〇〇〇〇―〇」を商品範囲として画定した。
  (イ) 本件製品については、日本国内での運送に関して、運送の難易性や運送費用の点からの制約はない。他方、本件取組の対象は、5地域に限定されていることに鑑み、競争への影響をより慎重に判断するため5地域を地理的範囲として画定した。
 イ(ア) 2社は、本件取組の開始後においても、それぞれ独自に本件製品を販売し、互いに販売価格、販売数量、取引先等には一切関与しない。
      また、本件製品の製造コストに関しては、2社の本件製品に係る製造工場はいずれも1か所のみであるところ、2社は、本件取組の対象となる本件製品を各自で製造し、うち等量の一定数量を物々交換の方法で相手方に引き渡すこととしているため、本件取組が行われても、基本的に5地域において供給される2社の本件製品の製造コストの額に変化が生じることはなく、当該製造コストが共通化することにもならない。そして、本件製品の供給に要するコストの面で本件取組によって変動が生じるのは、運送費、すなわち、2社の工場からそれぞれの物流拠点までの運送に係る費用であるが、2社は当該運送を各自で行うため、運送費が2社の間で共通化することもない。
      加えて、2社の工場には供給余力が十分ある。
  (イ) 本件取組の際、2社は互いの本件製品に係る製造コスト及び運送費に関して情報交換を行うことはしないので、本件取組の実施に伴ってこれらのコストに関する情報が2社の間で共有されることにはならない。また、相手の工場に取りに行き自社の物流拠点に運ぶので、お互いの納入先や納入価格等は分からない。
  (ウ) 以上のことからすると、本件取組が行われても、本件製品の製造販売を巡る競争は制限されない。
 ウ 本件取組においては、2社の間でそれぞれの事業活動を一方的又は相互に制約・拘束する取決めは、特段行われない。
 エ したがって、本件取組は、一定の取引分野における競争を実質的に制限するものではなく、独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

 本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。 

ページトップへ