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3 容器メーカーによる競争者に対する容器の一部のOEM供給

3 容器メーカーによる競争者に対する容器の一部のOEM供給

 容器メーカーが、競争者に対して競争者が製造販売する容器の一部をOEM供給することについて、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例 

1 相談者

 X社(容器メーカー) 

2 相談の要旨

⑴X社及びY社の2社(以下「2社」という。)は、いずれも、容器Aのメーカーである。
⑵ア 容器Aの需要者は、飲料等の最終商品を販売する飲料メーカー等である。
 イ 2社の容器Aの販売分野における市場シェアは、X社が約40 パーセント(第1位)、Y社が約10 パーセント(第3位)である。約30 パーセントの市場シェアを有する容器Aのメーカーも存在する(第2位)。
 ウ 日本国内において、X社の製造設備は3か所、Y社の製造設備は2か所ある。
 エ 容器Aについて、飲料メーカー等に対する日本国内における輸送上の制約はなく、地域によって価格が異なることはない。
   また、容器Aのメーカーは、日本全国において、飲料メーカー等に容器Aを販売しており、飲料メーカー等も容器Aのメーカーを地理的に区別することなく調達を行っている。
 オ 容器Aは、容器Aのメーカーにより商品の品質が大きく変わるものではない。また、飲料メーカー等は、最終商品に求められる用途、品質等に応じて、容器Aを含めた複数の競争品の中から購入する容器を選択している。
 カ 容器Aの国内需要は減少傾向にあり、供給過多の状況にある。
⑶Y社においては、2か所の容器Aの製造設備のうち、1か所の製造設備が老朽化しているが、容器Aの国内需要が減少傾向であることに加えて、当該製造設備を更新しようとすると、過大なコストが必要になることから、当該製造設備を更新することなく、容器Aの一部に関して競争者からOEM供給を受けることを模索し、X社に対して、OEM供給の打診を行った。
 そこで、X社は、競争者であるY社に対して、Y社が製造する容器Aの一部に関して、次の方法によってOEM供給することを計画している。
 ア Y社は、老朽化している容器Aの製造設備を更新せず、自社の容器Aの一部をX社から購入する。
 イ X社は、Y社からOEM供給の発注を受けた際、X社の生産状況等を踏まえて、その都度受注するかどうか判断する。
 ウ OEM供給の開始後においても、2社は、それぞれ独自に容器Aを販売し、互いに販売価格、販売数量、販売先等には一切関与しない。また、X社が得たOEM供給に関する情報は、X社の業務担当者と営業担当者との間で遮断措置を講じる。
   なお、Y社は本件取組によらなくとも、X社以外の容器Aのメーカーから容器Aを調達することが可能である。
   また、X社は、容器Aの製造設備の稼働状況に余裕があるため、Y社に対して容器AをOEM供給しても、自らの容器Aの製造数量に影響は生じない。
  このような2社の取組(以下「本件取組」という。)は、独占禁止法上問題となるか。
 

○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。
⑵ア(ア) 容器Aの需要者である飲料メーカー等は、最終商品に求められる用途、品質等に応じて、容器Aを含めた競争品の中から購入する容器を選択しており、容器Aと競争品の間には、一定の需要の代替性が認められるが、競争への影響をより慎重に検討する観点から、「容器A」を商品範囲として画定した。
  (イ) 容器Aについては、日本国内において輸送上の制約はなく、地域によって価格が異なることもない。また、容器Aのメーカーは、日本全国において、需要者である飲料メーカー等に容器Aを販売しており、飲料メーカー等も容器Aのメーカーを地理的に区別することなく調達を行っている。
      以上のことから、「日本全国」を地理的範囲として画定した。
 イ(ア) 2社の容器Aの販売分野における合計市場シェアは約50 パーセントであるものの、他に約30 パーセントのシェアを有する有力な競争者が存在し、隣接市場からの競争圧力もある。
  (イ) 2社は、本件取組の開始後においても、それぞれ独自に容器Aを販売し、互いに販売価格、販売数量、取引先等には一切関与しない。
      また、本件取組により、Y社がOEM供給を受ける容器Aの数量等に関する情報がX社にも共有されることになるが、X社は、社内での情報遮断措置の対策を講じる。
  (ウ) 以上のことからすると、本件取組が行われても、容器Aの販売を巡る競争は制限されない。
 ウ また、本件取組においては、2社の間でそれぞれの事業活動を一方的又は相互に制約・拘束する取決めは、特段行われない。
 エ 以上によれば、本件取組は、一定の取引分野における競争を実質的に制限するものではなく、独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

 本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。 

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