小売業者4社が、物流の2024年問題の解消に向けて、卸売業者に対する商品の発注において、①納品期限に係る商慣習を見直し「2分の1ルール」を採用すること、②定番商品について納品を希望する日の前日の正午までに発注するようにすること、③特売品等について発注から納品を希望する日までの期間を6営業日以上設けること及び④発注に係るデータの形式を標準化された規格で行うことに取り組むことを共同で宣言する行為について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
小売業者4社(スーパーマーケット業を営む事業者)
2 相談の要旨
⑴ア 小売業者4社(以下「4社」という。)は、スーパーマーケット業を営む事業者である。
イ 一般的に、小売業者が加工食品等を仕入れる場合、小売業者が卸売業者に対して発注を行い、発注を受けた卸売業者は、発注を受けた商品を調達し、自ら又は運送業者に委託して、調達した商品を小売業者に配送して納品している。
⑵ア 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)によって、令和6年4月1日以降、自動車運転の業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限され、トラックドライバーの拘束時間が減少するなどにより、物流への影響が懸念されている(以下、このような問題を「物流の2024年問題」という。)。
イ 物流の2024年問題の解消に向けて、国は、「3分の1ルール」(製造から賞味期限までの期間が180日以上の加工食品について、当該期間の3分の1を経過した時点を超えた場合には納品を受け付けないとする商慣習)を見直して「2分の1ルール」(製造から賞味期限までの期間が180日以上の加工食品について、当該期間の2分の1を経過した時点を超えた場合には納品を受け付けないとすること)を採用すること等を内容とする加工食品等における物流に係る課題の解決に向けたガイドラインを整理し、関係する事業者に取組を促している。
ウ 小売業者と卸売業者との間の商品発注の方法は、小売業者が選択する手法で行っていることから小売業者ごとに異なっている。そのため、手法を統一し発注の際の送付データ形式を標準化されたものとすることにより
(ア) 小売業者にとって、小売業者が選択する発注手法ごとにシステム改修や対応をとる必要がなくなり、当該システム改修コストの削減等に資する
(イ) 卸売業者及び小売業者にとって、保存が義務付けられる帳票の作成・保存の作業が別途必要であったものを電子上で行うことができるため、業務効率化に資する
効果が期待できる。
⑶4社は、小売業界全体に対し、物流の2024年問題への対応に率先して取り組む姿勢を示し、他の小売業者、卸売業者及び製造業者の間での持続可能な物流構築に向けた契機となるようにするため、国が策定したガイドラインを踏まえ、次のアないしエの内容に取り組むことについて共同宣言を行うこと(以下「本件取組」という。)を計画している。
ア 小売業者は、「3分の1ルール」を見直し、「2分の1ルール」を採用すること。
イ 小売業者は、卸売業者に日々発注する加工食品(以下「定番商品」という。)を卸売業者に発注するに当たり、納品を希望する日の前日の午後までに発注を行うこととする運用を行っているところ、当該運用について、納品を希望する日の前日の正午までに発注するようにすること。
ウ 小売業者は、卸売業者にスポットで発注する加工食品(以下「特売品等」という。)を卸売業者に発注するに当たり、発注から納品を希望する日までの期間を6営業日以上設けること。
エ 小売業者が商品を卸売業者に発注する際に卸売業者に送付する発注データの形式を標準化された規格で行うこと。
本件取組は、独占禁止法上問題となるか。
○本件取組の概要図
3 独占禁止法上の考え方
⑴事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。
⑵本件取組は、小売業者間における卸売業者からの加工食品の購入市場における取組であるところ
ア 4社が行う共同宣言の内容は、物流の2024年問題への対応という社会公共的な課題について、国が策定したガイドラインを踏まえた取組を行うものであることから、社会公共的な目的等正当な目的に基づくものであり、また、当該目的において合理的に必要とされる範囲内のものといえること
イ 加工食品等の購入価格や数量といった重要な競争手段を制限するものではないこと
から、独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答
本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。