依頼者から請け負った貨物の運送を行う事業者が、自らが運営するシステムにおいて、自社及び競争者の貨物の運送状況等に関する情報を集約し、それぞれの依頼者が自ら依頼した貨物の運送状況等を確認できるようにする取組について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X社(貨物運送業者)
2 相談の要旨
⑴ア X社は、依頼者から請け負った貨物の運送を行う事業者である。
イ X社は、前記アの貨物の運送に付随するサービスとして、自らが運営するシステムにおいて、依頼者が当該貨物の運送状況等をリアルタイムで確認できるサービスを提供している。
⑵ア X社に対する貨物の運送の依頼者の中には、X社の競争者に対しても貨物の運送を依頼している者がいるところ、X社は複数の依頼者から、X社の競争者の運送状況等についても、X社が運営するシステム上で確認できるようにしてほしいとの要望を受けた。
イ X社は、競争者から運送状況等の情報をX社が運営するシステムに提供してもらい、当該システムを通じて当該運送状況等をそれぞれの依頼者が確認できるようにすること(以下「追跡サービス」という。)を計画し、主要な競争者6社に参加を求めることとした。
⑶X社が
ア 追跡サービスの運営をX社との間に資本関係のないP社に業務委託するとともに、X社が、自社の貨物の運送状況等以外の情報を確認できないように情報遮断措置を講ずること
イ 追跡サービスに参加する競争者が、自社の貨物の運送状況等以外の情報を確認できないようにすること
ウ 依頼者は、自社が依頼した貨物の運送状況等以外の情報を確認できないようにすること
エ 競争者が追跡サービスのシステムに提供する情報は、追跡サービスの実施に必要な貨物運送に係る情報にとどめ、運賃等の情報は含まないこと
オ 追跡サービスに参加する競争者及び依頼者に対して、貨物運送の取引に係る条件を付さないこと
カ 追跡サービスに参加する競争者及び依頼者に対して、類似サービスの開始やその利用を制限しないこと
キ 追跡サービスへの参加を希望する競争者がいれば、参加を受け入れることとし、特定の競争者に対して差別的な条件を設けないこと
を条件に、追跡サービスを提供すること(以下「本件取組」という。)は、独占禁止法上問題となるか。
○本件取組の概要図
3 独占禁止法上の考え方
⑴ア 事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。
イ 事業者が、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件を付けて、当該相手方と取引することは、不公正な取引方法(一般指定第12項(拘束条件付取引))に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第19条)。
事業者が、自己と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもってするかを問わず、その取引を不当に妨害することは、不公正な取引方法(一般指定第14項(競争者に対する取引妨害))に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第19条)。
⑵本件取組は
ア X社及び追跡サービスに参加する競争者は、自社の運送状況等以外の情報を確認することができないため、X社及び追跡サービスに参加する競争者間において、貨物運送に係る取引条件について共通の意思が形成されるおそれはない
イ X社は、追跡サービスに参加する競争者及び依頼者に対して貨物運送の取引に係る条件を付さないこと、また、自社の運送状況等以外の情報を確認することができないため、追跡サービスに参加する競争者が追跡サービスのシステムに提供した貨物運送に係る情報を利用することができないことから、追跡サービスに参加する競争者と依頼者との取引を不当に妨害することにつながらない
ウ X社は、追跡サービスに参加する競争者及び依頼者に対して、類似サービスの開始やその利用を制限するものではないため、新規参入を妨害するものではなく、追跡サービスへの参加に必要な範囲を超えて事業活動を不当に拘束する条件を付けて取引するものではない
ことから、独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答
本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。