アジレント・テクノロジー株式会社が、実質的にみてエンドユーザへ販売していると認められるとして、卸売業者に対して医療機器等の販売価格を指示することについて、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
アジレント・テクノロジー株式会社(医療機器等の販売事業者)
2 相談の要旨
本件は、アジレント・テクノロジー株式会社(以下「アジレント・テクノロジー」という。)が、「ディーラー」と称する卸売業者(以下「ディーラー」という。)を通じて特定の病院等のエンドユーザ(以下「特定エンドユーザ」という。)に販売する医療機器等について、以下のとおり、特定エンドユーザとの間で商品の販売価格・数量を決定し、ディーラーに対して、当該価格・数量での特定エンドユーザへの販売を指示するものである。
⑴アジレント・テクノロジーは、特定エンドユーザとの間で直接交渉を行い、対象とする商品とその販売価格・数量を決定する。
⑵アジレント・テクノロジーは、ディーラーに対して、⑴で決定された商品をその価格・数量により特定エンドユーザに販売することを指示する。
⑶ディーラーは、特定エンドユーザと販売価格・数量の交渉を行うことなく、商品の物流及び代金回収の責任のみを負う。
⑷アジレント・テクノロジーは、特定エンドユーザへの販売価格から手数料相当額を控除した金額をディーラーに対する卸価格とすることにより、ディーラーに物流及び代金回収に係る手数料の支払を行う。
このようなアジレント・テクノロジーの取組(以下「本件取組」という。)は、独占禁止法上問題となるか。
○本件取組の概要図
3 独占禁止法上の考え方
本件取組に係る行為は、事業者が流通業者の販売価格(再販売価格)を拘束するものであることから、独占禁止法第19条(独占禁止法第2条第9項第4号(再販売価格の拘束))の観点から検討した。
⑴事業者が流通業者の販売価格(再販売価格)を拘束することは、原則として不公正な取引方法(独占禁止法第2条第9項第4号(再販売価格の拘束))に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第19条)。
しかし、メーカーと小売業者(又はユーザー)との間で直接価格について交渉し、納入価格が決定される取引において、卸売業者に対し、その価格で当該小売業者(又はユーザー)に納入するよう指示する場合で、当該卸売業者が物流及び代金回収の責任を負い、その履行に対する手数料分を受け取ることとなっているような場合であって、事業者(メーカー)の直接の取引先事業者(卸売業者)が単なる取次ぎとして機能しており、実質的にみて当該事業者(メーカー)が販売していると認められる場合には、当該事業者(メーカー)が当該取引先事業者(卸売業者)に対して価格を指示しても、通常、違法とはならない(流通・取引慣行ガイドライン第1部第1-2⑺)。
⑵本件取組に係る行為は、
ア アジレント・テクノロジーは、特定エンドユーザとの間で直接交渉を行い、対象とする商品とその販売価格・数量を決定し、ディーラーに対して、当該商品をその価格・数量で特定エンドユーザに販売することを指示するものであること
イ ディーラーは、商品の物流及び代金回収のみの責任を負うものであること
ウ ア及びイによれば、実質的にみてアジレント・テクノロジーが特定エンドユーザへ販売していると認められること
から独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答
本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。