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7 事業者団体による会員事業者の供給製品の原材料等に係る市況の推移、価格転嫁の状況等の調査の実施及び公表(令和4年12月9日公表)

7 事業者団体による会員事業者の供給製品の原材料等に係る市況の推移、価格転嫁の状況等の調査の実施及び公表(令和4年12月9日公表)

 一般社団法人日本アルミニウム協会が、会員事業者の供給製品の原材料等に係る市況の推移、コストや価格転嫁の状況等の調査の実施及び公表を行うことについて、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例  

1 相談者

 一般社団法人日本アルミニウム協会 

2 相談の要旨

 アルミニウム製品等の製造又は販売事業者等の団体である一般社団法人日本アルミニウム協会(以下「日本アルミニウム協会」という。)は、以下⑴及び⑵の調査を行い、結果を取りまとめた上、個々の会員事業者や個別具体的な商品の価格等の状況を明らかにすることのない形で公表する。
⑴公表されている燃料・エネルギー、物流、梱包費などの市況や為替の推移を調査し、現状を整理する。
⑵会員事業者を対象に、以下ア及びイを内容とする任意回答のアンケートを実施し、コストや価格転嫁の状況について取りまとめる。
 ア アルミニウム製品の製造に係る以下(ア)~(ウ)のコストの状況(基準年月を100と した指数で回答)
  (ア) 燃料・エネルギー(原油・重油・灯油・電気・LNGなど)コスト
  (イ) 物流・梱包(陸上輸送・海上輸送など、梱包資材など)コスト
  (ウ) 副原料(アルミニウム合金を製造するに当たり添加するマグネシウム、ケイ素、銅、マンガンなど)コスト
 イ コストアップ分の価格転嫁の状況(5つの選択肢(十分に転嫁できている、ある程度転嫁できている、あまり転嫁できていない、全く転嫁できていない、どちらともいえない)から回答)
 このような日本アルミニウム協会の取組(以下「本件取組」という。)は、独占禁止法上問題となるか。

 (注)アルミニウム製品のコストは、一般的に、その内訳が主原料(アルミニウム地金)に係るものと主原料を除く加工費に分けられるところ、主原料に係るものついては、ロンドン金属取引所の市況と連動して決定される取引が多いとされている。

○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴事業者団体の情報活動を通じて、競争関係にある事業者間において、現在又は将来の事業活動に係る価格等重要な競争手段の具体的な内容に関して、相互間での予測を可能にするような効果を生ぜしめる場合がある。このような観点から見て、重要な競争手段に具体的に関係する内容の情報活動は、独占禁止法上問題となり得るものである。
 事業者団体によるこのような情報活動を通じて、事業者間で、価格、数量、顧客・販路、設備等に関する競争の制限に係る合意が形成され、事業者が共同して市場における競争を実質的に制限する場合には、これら事業者の行為が独占禁止法第3条の規定に違反する(事業者団体ガイドライン第2-9(情報活動)⑵及び9-1)。
 一方、事業者団体が、需要者、事業者等に対して過去の価格に関する情報を提供するため、事業者から価格に係る過去の事実に関する概括的な情報を任意に収集して、客観的に統計処理し、価格の高低の分布や動向を正しく示し、かつ、個々の事業者の価格を明示することなく、概括的に、需要者を含めて提供することは、事業者間に現在又は将来の価格についての共通の目安を与えるようなことのないものに限り、独占禁止法上問題とならない(事業者団体ガイドライン第2-9-5(価格に関する情報の需要者等のための収集・提供))。
⑵ア 日本アルミニウム協会の行う市況や為替の推移の調査の対象は、公表されているものであり、その推移を整理するにとどまるものであるため、本調査については、独占禁止法上問題となるものではない。
 イ アルミニウム製品の製造に係るコストの状況の調査については、個々の会員事 業者や個別具体的な商品の価格等の状況を明示することなく、客観的に統計処理し、価格の高低の分布や動向を正しく示す形で取りまとめるとされ、また、指数を用いて回答・取りまとめが行われるとされている。これらを踏まえれば、本取組は、会員相互間に現在又は将来の価格についての共通の目安を与えるものではなく、独占禁止法上問題となるものではない。
 ウ コストアップ分の価格転嫁の状況の調査については、5つの選択肢により定性的な回答を求めるものであり、重要な競争手段の内容に関して相互間での予測を可能とするものではなく、独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

 日本アルミニウム協会による本件取組については、アンケート調査の結果の公表に当たり、個々の会員事業者や個別具体的な商品の価格等の状況を明示することなく、客観的に統計処理し、価格の高低の分布や動向を正しく示す場合には、独占禁止法上問題となるものではない。

(注)日本アルミニウム協会は、コストの状況として、労務費についても公表している。 

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