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3 今後製品寿命が到来する電気機器についてのメーカーによる廃棄処理業務の共同化

3 今後製品寿命が到来する電気機器についてのメーカーによる廃棄処理業務の共同化

 今後製品寿命が到来する電気機器について、電気機器メーカー12社が、それぞれ行っていた廃棄処理業務を、新たに共同で設立する団体において行う取組について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例  

1 相談者

 X社ら12社(電気機器メーカー) 

2 相談の要旨

⑴  X社ら12社(以下「12社」という。)は、電気機器αのメーカーであり、電気機器αの販売市場において合計約95%のシェアを占めている。


⑵ア 電気機器αは、グリーン社会の実現に資することなどから、近年、急速に普及が進んできた製品である。電気機器αには、一定の製品寿命があるところ、電気機器αの普及の開始から一定の期間が経過しており、今後、普及の開始の初期に購入された電気機器αから順に製品寿命が到来し始めるため、電気機器αの廃棄処理数も増加することが予想されている。

 イ    電気機器αの所有者は、電気機器αを廃棄するに当たっては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)に基づき、自ら又は都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処理業者若しくは環境大臣から広域処理の認定を受けた電気機器メーカー若しくはその団体に委託して、その処理を行う必要がある。

 ウ    電気機器メーカー等が広域処理の認定を受けるための申請方法には、電気機器メーカー単独での申請、複数の電気機器メーカーで構成される団体での申請等が存在する。このうち、電気機器メーカー単独での申請によって広域処理の認定を受けた場合、自らが製造した電気機器αについてのみ廃棄処理業務を行うことができる。他方、団体での申請によって広域処理の認定を受けた場合、同団体が、同団体に加入している全メーカーの電気機器αについて廃棄処理業務を行うことが可能となる。


⑶ア 産業廃棄物処理業者は、日本全国に約11万社存在するとされ、それぞれが許可を受けた区域内において、様々な製品について産業廃棄物の処理を行っており、電気機器αについてもメーカーを問わずに処理を行っている。

 イ   12社は、自らが製造した電気機器αについて、それぞれ単独で広域処理の認定の申請を行って認定を受けているため、廃棄処理業務を行うことができるが、他社製の電気機器αの廃棄処理業務を行うことはできない。

 ウ   12社は、受託した廃棄処理業務を産業廃棄物処理業者に再委託しており、その再委託の範囲も含めて広域処理の認定を受けており、廃棄処理業務の行程を統括して管理している。

 エ   電気機器αの廃棄処理業務の提供に係る12社の市場シェアの合計は、小さい。また、産業廃棄物処理業者の多くは、電気機器αの廃棄処理業務の提供について、十分な供給余力を有している。


 

⑷  12社は、今後増加が予想される電気機器αの廃棄処理について、その所有者が廃棄物処理を委託しやすくすることにより確実に廃棄処理が行われるようにするとともに、増加が予想される廃棄処理に効率的に対応するため、次の方法により、共同で電気機器αの廃棄処理業務を行うこと(以下「本件取組」という。)を検討している。

  ア   12社は、共同で事業者団体(以下「本件団体」という。)を設立し、本件団体は、12社が製造する電気機器αの廃棄処理について広域処理の認定を受ける。

  イ   12社は、今後、廃棄処理を希望する電気機器αの所有者には本件団体を案内する。

  ウ   12社は、電気機器αの商品仕様等、廃棄処理業務に必要となる最小限の情報を本件団体に提供する。本件団体に提供された情報は、12社が相互に知り得ることのないよう、本件団体において適切に情報遮断措置を講じる。

  エ   本件団体は、電気機器αの廃棄処理業務に係る料金を自ら決定し、電気機器αの所有者から料金の支払を受ける。

  オ   本件団体は、電気機器αの廃棄処理業務の委託を受けた場合、産業廃棄物処理業者に再委託する。

  カ   12社は、12社のいずれかの社が、廃棄処理を希望する電気機器αの所有者に本件団体を案内せず、自ら電気機器αの廃棄処理業務を行うことを妨げない。

     本件取組は、独占禁止法上問題となるか。




○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴  事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。


⑵ア 本件取組が電気機器αの所有者に対する廃棄処理業務の提供市場における競争に与える影響について検討する。

     本件取組により、従来12社が個別に受託して行っていた電気機器αの廃棄処理業務の提供について、本件団体が一括して行うことになる。しかし、電気機器αの廃棄処理業務の提供に係る12社の市場シェアの合計は小さいこと及び産業廃棄物処理業者の多くは、電気機器αの廃棄処理業務の提供について、十分な供給余力を有していることから、本件取組によって、電気機器αの所有者に対する廃棄処理業務の提供に係る競争が実質的に制限されるとはいえない。

 イ    本件取組が産業廃棄物処理業者からの電気機器αの廃棄処理業務の調達市場における競争に与える影響について検討する。

     本件取組により、従来12社が個別に行っていた電気機器αの廃棄処理業務の調達について、本件団体が一括して行うことになる。しかし、12社が電気機器αの廃棄処理業務の提供を行うためには、産業廃棄物処理業者から同業務の調達を行う必要があるところ、電気機器αの廃棄処理業務の提供に係る12社の市場シェアの合計は小さいことから、同業務の調達に係る12社の市場シェアの合計も同様に小さいといえるため、産業廃棄物処理業者は、12社以外の者から電気機器αの廃棄処理業務を受託することが可能であり、また、産業廃棄物処理業者は、電気機器α以外の産業廃棄物も広く受託しており、12社が、その意思で、ある程度自由に、電気機器αの廃棄処理業務の調達に係る料金を左右できるものではないと考えられることから、本件取組によって、産業廃棄物処理業者からの電気機器αの廃棄処理業務の調達に係る競争が実質的に制限されるとはいえない。

 ウ    本件取組が電気機器αの販売市場における競争に与える影響について検討する。

     本件取組に当たり、12社は電気機器αの商品仕様等の情報を本件団体に提供するが、当該情報は本件団体において12社が知り得ないよう適切に遮断され、12社は引き続き独立した競争単位として電気機器αの販売を行う。このため、本件取組が電気機器αの販売市場における競争に影響を与えるものではない。

 エ    以上によれば、本件取組は独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

 本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。 

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