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4 加工食品メーカーによる物流事業者が納品場所で行っている商品の開梱、値札付け作業、店頭での商品陳列等の附帯作業の見直しに向けた共同宣言

4 加工食品メーカーによる物流事業者が納品場所で行っている商品の開梱、値札付け作業、店頭での商品陳列等の附帯作業の見直しに向けた共同宣言

 加工食品メーカー4社が、物流の2024年問題の解消に向けて、小売業者に対する商品の配送において物流事業者が納品場所で行っている商品の開梱、値札付け作業、店頭での商品陳列等の附帯作業の見直しに取り組むことを共同で宣言する行為について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例  

1 相談者

 加工食品メーカー4社 

2 相談の要旨

⑴ア  加工食品メーカー4社(以下「4社」という。)は、加工食品αの製造販売業を営む事業者であり、卸売業者を介することなく小売業者との間で直接取引を行っている。加工食品αの製造販売分野における4社の市場シェアの合計は、約75パーセントである。

 イ    4社は、それぞれ加工食品αの配送業務を物流事業者に委託し、同業務を受託した物流事業者は、小売業者の店舗、配送センター等の納品場所まで加工食品αを配送している。

 ウ    4社と小売業者間の取引においては、加工食品αの配送の際に、納品者が納品場所において、小売業者の指定する附帯作業(商品の開梱、値札付け作業、店頭での商品陳列等)を行うことが商慣習となっている。そのため、4社は、加工食品αの配送業務と附帯作業を合わせて物流事業者へ委託している。


⑵ア  働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)によって、令和6年4月1日以降、自動車運転業務についての時間外労働時間は、原則として月45時間及び年360時間が上限となり、臨時的な特別の事情がなければ当該上限を超えることができず、臨時的な特別の事情があっても年960時間が上限とされ、トラックドライバーの労働時間が減少するなどにより、物流への影響が懸念されている(以下、このような問題を「物流の2024年問題」という。)。

 イ    物流の2024年問題の解消に向け、国は「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」において、発荷主事業者及び着荷主事業者に対し、両者間の商取引契約において、物流事業者に過度な負担をかけているものがないか検討し、改善することを促している。

 ウ    加工食品メーカーと小売業者との取引において、小売業者の指定する附帯作業は、物流事業者の過度な負担になっている状況にあり、その見直しによって配送効率が改善することが見込まれている。


⑶   4社は、物流の2024年問題の解消に向けて、物流事業者の過度な負担を軽減し、配送効率を改善するため、それぞれ附帯作業の見直しに取り組むことについて、共同で宣言すること(以下「本件取組」という。)を計画している。4社は、附帯作業の見直しを以下の方法で実施する。

  ア   4社は、見直しを行う附帯作業の範囲、時期、地域、方法等の内容を、それぞれ独自に決定する。

  イ   4社は、小売業者との間で、附帯作業の見直しに係る交渉を、それぞれ独自に行う。

  ウ   4社は、相互に、附帯作業の見直しの実施を強制せず、それぞれの交渉の内容、進捗、結果等に係る個別具体的な情報共有を行わない。

     本件取組は、独占禁止法上問題となるか。



○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方

⑴  事業者が、契約、協定その他何らの名義をもってするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)に該当し、独占禁止法上問題となる(独占禁止法第3条)。


⑵  附帯作業の実施の有無及びその内容は、加工食品αの販売において、4社の競争手段の一つとなり得るものである。しかし、

  ア   本件取組は、価格や数量といった重要な競争手段を制限するものではなく、また、4社はそれぞれ見直しの内容を独自に決定し、小売業者との間で独自に交渉を行うものであり、本件取組が需要者の利益を不当に害するものではないこと

  イ   本件取組は、物流の2024年問題への対応という社会公共的な課題について、国が策定したガイドラインを踏まえて行うものであり、社会公共的な目的等正当な目的に基づくものであること、また、当該目的において合理的に必要とされる範囲内のものといえること

     から、本件取組は独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答

 本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。 

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