金属素材の製造販売業者等を会員とする団体が、会員が行うコスト上昇分の価格転嫁を支援することを目的として、原料費の増減と連動する価格設定の一般的な方法を会員に紹介する取組について、具体的な数値を含める等の方法により、会員の価格等重要な競争手段の具体的な内容について共通の目安を与えるものではなく、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
#経営指導、#原価計算の一般的な方法、#価格転嫁対策、#金属素材のコスト上昇、#市況連動制の価格算定方式
1 相談者
X協会(金属素材Bの製造販売業者等を会員とする団体)
2 相談の要旨
⑴ X協会は金属素材Bの製造販売業者等を会員とする団体であり、会員の約半数が中小企業である。
⑵ 金属素材Bは、原料βを含む複数の原料を用いて製造される製品である。原料βは、金属素材Bの原料のうち、コストベースで1割程度を占めている。
また、原料βの輸入品は、財務省貿易統計において、その輸入総額及び輸入総量が月別に公表されている。
⑶ 原料βは、我が国では殆ど生産されておらず、その多くを輸入に頼っているところ、近年、その輸入価格が高騰している。
一方、X協会の会員は、原料βの購入価格の上昇分を、金属素材Bの販売価格に十分に転嫁できているとはいえない状況にある。金属素材Bへの価格転嫁が十分に進まない理由の一つとして、X協会会員の約半数を占める中小企業は、自社のコスト分析や取引先との頻繁な価格交渉に十分な経営資源を割けないことが挙げられる。
⑷ X協会は、会員が多大な経営資源を割くことなく、原料βの購入価格の変動分を金属素材Bの販売価格に反映させることができるよう、その事業活動を支援するため、金属素材Bの販売価格の設定方法の一例を説明した文書(以下「支援ツール」という。)を作成してX協会のウェブサイトに掲載し、会員に対し、原料βの市況に連動した金属素材Bの販売価格の設定方法(以下「市況連動制」という。)を紹介すること(以下「本件取組」という。)を計画している。X協会が支援ツールにおいて紹介する市況連動制の内容は以下のとおり。
ア はじめに、各会員が取引先との個別交渉により、価格設定のサイクル期間を設定する。サイクル期間には、原料βの市況変動を参照する「値決め期間」と、参照した原料βの市況の変動状況を金属素材Bの販売価格に反映させる「適用期間」とを設ける。
イ 次に、原料βの市況の変動状況を参照する。
(ア) 参照する市況には財務省貿易統計を用い、公表されている原料βの輸入総額を輸入総量で除することにより、原料βの月別の平均輸入単価を算出する。
(イ) 過去の任意の時点から、原料βの市況変動状況を把握する際の比較対象とする基準時点を設定する。
(ウ) 前記(イ)で設定した基準時点における原料βの平均輸入単価と、前記アで設定した値決め期間における原料βの平均輸入単価とを比較し、その差額を算出する。
ウ 最後に、前記イ(ウ)で算出した原料βの平均輸入単価の変動状況を、前記アで設定した適用期間における金属素材Bの販売価格に反映させる。反映の具体的な方法は、原料βの市況が一定額の増減をするごとに、前記イ(イ)で設定した基準時点における金属素材Bの販売価格を一定の割合で増減させるなどの方法を、各会員と取引先との間の個別交渉により決定する。
本件取組において、X協会の会員が、自らの金属素材Bに係る価格設定に市況連動制を採用するか否かは個社ごとの判断によるものとし、また、X協会は支援ツールにおいて、会員の共通の目安となるような具体的な数値は示さない。
本件取組は、独占禁止法上問題となるか。
○本件取組の概要図
3 独占禁止法上の考え方
⑴ア 事業者団体が、原価計算や積算について標準的な項目を掲げた一般的な方法を作成し、これに基づいて原価計算や積算の方法に関する一般的な指導又は教育を行うことは、原則として違反とならない(事業者団体ガイドライン第2の10-4)。
一方、経営指導の形をとっていても、事業者団体が、例えば構成事業者が供給する商品又は役務に係る平均原価、統一的なマークアップ基準等又は所要資材等の標準的な数量、作業量等及び単価を示す方法により、原価計算又は積算の指導を行うなど、事業者の現在又は将来の事業活動に係る価格等重要な競争手段の具体的な内容について目安を与えるような指導を行うことは、違反となるおそれがある(独占禁止法第8条第1号及び第4号並びに事業者団体ガイドライン第2の10-1)。
また、経営指導の内容の採否は構成事業者の任意の判断に委ねられるべきであって、事業者団体が経営指導の内容の採用を構成事業者に強制することは、構成事業者の機能又は活動を不当に制限するものとして、独占禁止法上問題となるおそれがある(独占禁止法第8条第4号)。
イ 事業者団体が、政府機関、民間の調査機関等が提供する当該産業に関連した技術動向、経営知識、市場環境、立法・行政の動向、社会経済情勢等についての一般的な情報を収集し、提供することは、原則として違反とならない(事業者団体ガイドライン第2の9-3)。
⑵ 本件取組は、金属素材Bの販売価格の設定方法についての情報を共有するものであり、金属素材Bの販売市場における現在又は将来の競争に影響を与える可能性があると考えられるため、当該市場に与える影響について検討する。
⑶ 本件取組においては、X協会が、複数の原料を用いて製造される金属素材Bの販売価格について、原料βの市況に連動する方法を具体的な数値を用いずに紹介しており、価格設定のサイクル期間も各会員がそれぞれに設定するものとしている。このような紹介方法による経営の指導又は教育の場合には、支援ツールを用いる会員ごとに金属素材Bの販売価格を計算する方法や販売価格、また、価格改定のタイミングは異なるものになると考えられる。このため、本件取組における支援ツールの内容は一般的な価格設定の方法を紹介するものであり、会員の現在又は将来の事業活動に係る価格等重要な競争手段の具体的な内容について目安を与えるものではないと考えられる。
また、本件取組においては、X協会は、その会員が市況連動制を採用するか否かを個社ごとの判断によるものとしていることから、会員の機能又は活動を不当に制限するものではないと考えられる。
なお、本件取組において、X協会が会員に財務省貿易統計のうち特定の項目を紹介する行為は、事業者団体が、政府機関、民間の調査機関等が提供する市場環境についての一般的な情報を収集し、会員に提供する行為であり、原則として独占禁止法上問題とならない。
⑷ 以上から、本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答
本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。